プリント基板の「弁当箱」からパッケージとチップまで、電磁シールド技術が進化:福田昭のデバイス通信(446) 2022年度版実装技術ロードマップ(70)(1/2 ページ)
JEITA「2022年度版 実装技術ロードマップ」の「パッケージ組立プロセス技術動向」について解説するシリーズ。今回は第3章第4節第6項(3.4.6)「電磁シールド」の概要を説明する。
情報通信の高速化と高周波化が電磁シールドの改良を促す
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
本シリーズの第66回から、第3章第4節(3.4)「パッケージ組立プロセス技術動向」の内容説明に入った。第3章第4節は、第1項から第9項までの9個の項目で構成される。内容は、パッケージを組み立てるための要素技術の説明である。
前回は第3章第4節第5項(3.4.5)「樹脂封止技術(アンダーフィル、モールディング)」の概要を報告した。今回は第3章第4節第6項(3.4.6)「電磁シールド」の概要をご説明する。
第3章第4節(3.4)「パッケージ組立プロセス技術動向」の主な目次。第3章第4節第6項(3.4.6)「電磁シールド」の詳細を示した。この目次は「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)から筆者がまとめたもの[クリックで拡大]
3章第4節第6項(3.4.6)「電磁シールド」は、以下の5つの項目で構成される。「3.4.6.1 電磁ノイズとシールド」「3.4.6.2 EMC関連市場」「3.4.6.3 現在適用されている電磁シールド」「3.4.6.4 新たな電磁ノイズ抑制技術」「3.4.6.5 今後の取組み」、である。
電磁雑音の伝搬経路と一般的な対策
雑音源から出力された電磁雑音(不要な信号成分)の伝搬経路は、主に2つある。1つは配線を伝わる雑音であり、「伝導雑音」「導体伝導ノイズ」などと呼ばれる。もう1つは電磁波となって空間から電子回路に侵入する雑音である。「放射雑音」「不要ふく射」「空間伝導ノイズ」などと呼ばれる。
伝導雑音の対策として一般的なのは、EMI対策部品やEMIフィルターなどと呼ばれる部品を配線に接続することだ。インダクター、チップビーズ、コンデンサー、コモンモードフィルター、ライントランス、ツェナーダイオード、バリスタなどの部品が使われる
放射雑音の対策として一般的なのは、電磁波を通さない部材を使って不要な電磁波をシールド(遮蔽)することだ。プリント基板の一部に金属板のキャップを被せるシールドは、ごく普通に使われており、「弁当箱」と呼ばれることが少なくない。
金属板のキャップを被せるシールド(「弁当箱」)には、寸法がキャップ内部の電子部品よりも高くなるという制限がある。薄型の電子機器であるスマートフォンやメディアタブレットなどにはあまり向いていない。
そこでモールド樹脂パッケージの表面を銅(Cu)や銀(Ag)の薄い膜で覆うシールドが薄型機器で使われるようになってきた。銅はスパッタリング、銀はペーストのスプレーでパッケージ表面を被覆する。
またプリント基板に半導体や電子部品などを搭載した後で、雑音発生源あるいは雑音に弱いとみられる領域に「ノイズ抑制シート」と呼ばれる磁性体の対策部品を貼り付ける手法もある。設計段階では予測できなかった電磁雑音の対策として使われる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.