実装面積69.56平方ミリ、60V耐圧の300mA 降圧DC-DCコンバーター:高効率と低消費電力を両立
トレックス・セミコンダクターは2024年2月26日、60V耐圧の300mA 降圧DC-DCコンバーター「XC9702シリーズ」を販売開始した。小型周辺部品に対応することで、実装面積は9.4×7.4mmと、60V耐圧動作において「世界最小クラス」(同社)を実現した。
トレックス・セミコンダクター(以下、トレックス)は2024年2月26日、60V耐圧で出力電流が300mAの降圧DC-DCコンバーター「XC9702シリーズ」を発表した。実装面積は69.56mm2(9.4×7.4mm)と、60V耐圧動作において「世界最小クラス」(同社)を実現した。
XC9702シリーズは、入力電圧範囲4.5〜60V、出力電圧範囲2.5〜12Vで、動作周囲温度は−40〜125℃。不安定な24V電源から安定した3.3Vや5Vを生成する必要があるFA(ファクトリーオートメーション)機器などの産業機器向けに開発した。「FA機器では、モーターの停止時の回生エネルギーを活用する動きが増えている。回生エネルギーは不安定で24Vを上回る電圧が入力されるオーバーシュートが発生するため、60Vという高耐圧のDC-DCコンバーターが必要になっていて、そうした用途に向けて開発した」(トレックス担当者)
これまで3.3Vや5V出力のDC-DCコンバーターとしては60V耐圧品が少なく、オーバーシュートなどのサージ対策が必要な用途では、36V耐圧品に外付け部品で対策することが一般的で、実装面積が大きくなった。発振周波数を高めることで外付け部品を小型化できるが、発振周波数と消費電流はトレードオフの関係にあり、消費電流が大きくなるという課題があった。
トレックスの担当者は「今回、新しくプロセス技術から開発することで、(外付け部品での)サージ対策が不要な60V耐圧品を開発できた。発振周波数を上げつつ、消費電流を抑える技術を構築したことが小型化を実現できた要因だ」と説明した。
消費電流は12μA、変換効率は83%
XC9702シリーズは、6.2x5.2x1.7mmサイズの端子付きパッケージ(HSOP-8N)と2.6x2.9x0.6mmサイズの面実装パッケージ(USP-10B)の2種がある。発振周波数は1.0MHzで、周辺部品を含めたシステム実装面積を9.4×7.4mmに抑えられるという。
ノイズ対策が容易なPWM制御と、軽負荷から重負荷まで高い変換効率を実現できるPWM/PFM自動切り替え制御を自由に選択できるMODE端子を備える。
消費電流は12μAで、変換効率は12V入力、5V出力時で83%だ。12V/24V電源から5V/3.3Vに高効率で降圧できるため、発熱の大きい中高耐圧LDOレギュレーターの置き換え用途でも需要を見込む。保護機能として電流制限、過電圧保護、Lx短絡保護、サーマルシャットダウンを備え、異常状態が発生しても安全に使用できる。外部ソフトスタート調整機能とパワーグッド機能を搭載し、電源シーケンスを調整できる。
トレックスの担当者は、「高耐圧にも関わらず低消費電力のため、待機時の低消費電力化や、省実装面積と併せて高効率化や発熱の低減に貢献する。こうした特徴からPoE(Power over Ethernet)の48V入力を電源に使用する機器や多セルリチウム電池で駆動する電動工具、セキュリティシステムなどからの引き合いも増えている」という。
サンプル価格は185円(税込)。販売目標は「産業機器分野での本格的な導入が見込まれる4〜5年後に年間160万個」とする。
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