検索
ニュース

消費電流400nAのPWM/PFM制御昇圧DC-DCコンバータースリープからピーク電流まで高効率

トレックス・セミコンダクターは2022年4月、消費電流を400nAにまで低減させ、軽負荷時の効率を大幅に改善したPWM/PFM制御昇圧同期整流DC-DCコンバーター「XC9145シリーズ」を開発したと発表した。低消費電力化が進むSoCやマイコンに対応し、IoT機器などシステム待機時の割合が大きい機器の消費電力を大幅に削減することが可能という。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 トレックス・セミコンダクターは2022年4月11日、消費電流を400nAにまで低減させ、軽負荷時の効率を大幅に改善したPWM/PFM制御昇圧同期整流DC-DCコンバーター「XC9145シリーズ」を開発したと発表した。

 低消費電力化が進むSoC(System on Chip)やマイコンに対応し、IoT(モノのインターネット)機器などシステム待機時の割合が大きい機器の消費電力を大幅に削減することが可能という。同日より発売し、サンプル価格は140円(税別)。初年度は100万個の出荷を目指す。

軽負荷時、従来品より一桁小さい消費電流を実現


400nA超低消費昇圧DC-DCコンバーター「XC9145シリーズ」の実装基板[クリックで拡大] 出所:トレックス・セミコンダクター

 トレックスによれば、IoT機器をはじめ、センサー、ウェアラブル機器などの小型バッテリー搭載デバイスを手掛ける顧客からは、マイコンや無線部のため常時3.3Vが必要なIoT機器やセンサーへの供給を行う一方、1次電池1本で5〜10年程度の動作もさせるという「マイコンやSoCの低消費電力化とロングバッテリーライフ」が求められているという。

 さらに、通信時など、瞬間200〜300mAほどのピーク電流能力と同時に小型、高効率、高温動作などを両立する「機器の高性能化」への強い要求もある。今回のXC9145シリーズは、超低消費電流回路およびPWM/PFM制御方式の採用によってこれらの要求を満たす性能を実現したという。

 XC9145シリーズは超軽負荷時高効率と、通信に対応した電流能力を実現したことが大きな特長だ。同社従来品と効率を比較したグラフ(下図、条件:Vin=2.4V、Vout=3.3V)から、その性能が分かる。グラフ内緑色のエリア(1μ〜10μA)はセットがスリープ時の消費電流エリアだが、同社の従来品であるXC9142シリーズ(青線)、XC9140シリーズ(緑線)はそれぞれ自己消費電流が17μA、6.3μAと大きいことからこのエリアでの効率も低くなっていた。


400nA超低消費昇圧DC-DCコンバーター「XC9145シリーズ」の特長[クリックで拡大] 出所:トレックス・セミコンダクター

 これに対して今回のXC9145シリーズ(赤線)は、従来品より一桁小さい自己消費電流400nAを実現したことから、出力電流1μA時で70%弱、10μA時は約90%と高効率を発揮している。同社説明担当者は、「マイコン待機時でも高効率なため、オンオフ制御やスイッチによる複雑な制御が必要なくなる。常時オンで使用できる製品となっている」と説明している。

 同社によると、XC9145シリーズは従来品のXC9142シリーズにおける低負荷時の効率低下という課題を解決する形で実現した製品だという。

 XC9145シリーズとXC9142シリーズはいずれもPWM制御とPFM制御を自動で切り替える方式をとっている。ただ今回、XC9145シリーズではPFM動作の際に不要な回路(PWM動作で使っているような回路など)を完全に停止させるほか、PFM動作の際、昇圧の必要がない待機時には消費電流を極限まで抑え、昇圧動作が必要な時だけ消費電流を切り替えて出力するという、新たな回路を採用したことで自己消費電流400nAを達成したという。

 同時にピーク電流(グラフ内赤色のエリア)においても、XC9142シリーズと同等の性能を維持。「セットのスリープから通信のピーク電流まで、常に高効率な昇圧供給を実現した」としている。

 下図内左は、アクティブ/スリープ時の損失およびバッテリー駆動時間の比較だ。9142シリーズと比べ、スリープ時の損失は約4分の1に、バッテリー駆動時間は約2倍を達成できるとしている。


XC9145シリーズと従来製品との損失やバッテリー駆動時間の比較[クリックで拡大] 出所:トレックス・セミコンダクター

105℃対応で産業用途の展開狙う

 同社は、XC9145シリーズのターゲットとしてIoT/ウェアラブル、コンシューマー、各種モニター用途、エナジーハーベストからの昇圧など幅広いターゲットを見込んでいる。特に、動作温度が+105℃まで対応可能となったことから産業用途での拡大も期待しているといい、「工場内設備に後付けする故障検知センサーなど、厳しい環境での仕様にも対応できる製品だ」と強調していた。

 パッケージは1.28×1.08×0.4mmの「WLP-6-05」または1.8×2.0×0.6mmの「USP-6C」といずれも小型の2種類を用意。待機時高効率の特性により電池の小型低容量化も可能となることから、「機器全体の小型化にもつなげることができる」としている。

左=XC9145シリーズを用いる回路例とターゲットアプリケーション例/右=XC9145の代表特性[クリックで拡大] 出所:トレックス・セミコンダクター

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る