日本との協業を加速するTenstorrent LSTCにチップレットIPをライセンス供与:Rapidusとも提携を発表(2/2 ページ)
Tenstorrentが、AI(人工知能)アクセラレーターの開発において日本との協業を加速している。2024年2月には、同社のRISC-V CPU「Ascalon」のカスタムバージョンを含む3つのチップレット設計を、日本の技術研究組合 最先端半導体技術センター(LSTC)にライセンス供与すると発表した。
“組織横断的に”チップレットを開発する取り組み
チップレットは物理層で相互に互換性が必要だが、アーキテクチャレベルでも電源管理やセキュリティ、起動シーケンスなどの点で連携する必要がある。TenstorrentはLSTCに仕様を提供し、チップレット設計に関する同社の専門知識を効率的にLSTCに移行する予定だ。
Lien氏は、「今日目にするチップレット技術のほとんどは、1つの企業内でエコシステム全体が開発されているが、われわれが手掛けるのは、互換性のあるチップレットシステムを構築するための組織横断的な取り組みだ。チップレットは多くの人の話題に上るが、このプロジェクトは、“2つの国の、2つの別々の組織にまたがるチップレット”のビジョンを実現し、非常に複雑なチップのコンセプトを実証するものになる」と語る。
Lien氏は、「このプロジェクトは、Tenstorrentにも大きなメリットをもたらす」と強調する。
「Tenstorrentチップレットの仕様と互換性の定義をテストする方法として、このプロジェクトに非常に期待している。当社は、このチップレットエコシステムをどのように構築できるかについての詳細な仕様を有している。それをLSTCに移行し、どのような課題が出てくるのかを学びたい」(Lien氏)
Lien氏は、「われわれは非常に複雑なチップを構築している。私が最も重視しているのは互換性だ。どのように互換性基準を定義すれば、その基準を満たしたときに、組み合わせたシステムが2つの組織間で確実に動作するのかということだ」と述べる。「当社の今後のチップレットには下位互換性が必要になるが、これについても慎重に検討している」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- RapidusとTenstorrent、2nmプロセスでのエッジAIアクセラレーター開発/製造で協業
RapidusはTenstorrentと協業し、2nmプロセスベースのエッジAI(人工知能)アクセラレーターの開発/製造を行うと発表した。国際連携によって、生成AIを含むエッジ推論処理専用のエッジAIアクセラレーター開発を推進するという。 - imecも全幅の信頼、Rapidusの「成功の定義」とは何か
imecや経済産業省など、Rapidusの支援を公言する組織/企業は多い。さらに、米TenstorrentやフランスLetiなど、Rapidusとパートナーシップを締結する企業や機関も増えている。それはなぜなのか。2023年11月に開催された「ITF(imec Technology Forum) Japan」で見えてきたその理由と、Rapidusにとっての「成功の定義」をあらためて考えてみたい。 - Rapidusとも提携、Tenstorrentの現状と戦略
2nmプロセスベースのAIエッジデバイス領域での半導体IPに関して、Rapidusと提携を結んだTenstorrent。同社CEOのJim Keller氏が今回、米国EE Timesのインタビューに応じ、事業の現状や戦略などを語った。 - TSMC熊本工場は「今後10年間の日本の半導体産業を形作る」
台湾の市場調査会社であるTrendForceは、日本の半導体産業の状況とTSMCが与える影響について分析。TrendForceはJASMの熊本工場が、「今後10年間の日本の半導体産業を形作るものになる」と述べている。 - 米CHIPS法の理想と現実 強まる「政治色」への懸念も
米国の半導体産業支援策である「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)が、現実に直面し始めている。専門家は「CHIPS法の補助金は、台湾に対する米国の過度な依存を改善することはできないだろう」と述べている。2024年11月に米大統領選を控え、CHIPS法が政治的な困難に直面しているとみるアナリストもいる。 - 半導体業界 2024年の注目技術
本稿では、EE Times Japan編集部が注目する、半導体業界の2024年の注目技術/トレンドをまとめる。