TSMC熊本工場は「今後10年間の日本の半導体産業を形作る」:TrendForceが分析
台湾の市場調査会社であるTrendForceは、日本の半導体産業の状況とTSMCが与える影響について分析。TrendForceはJASMの熊本工場が、「今後10年間の日本の半導体産業を形作るものになる」と述べている。
台湾の市場調査会社であるTrendForceは2024年2月、日本の半導体産業の状況とTSMCが与える影響に関する考察を公開した。TrendForceは、TSMCの製造子会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)の熊本工場が、「今後10年間の日本の半導体産業を形作るものになる」と述べている。
24年のファウンドリー市場は1316億ドル、TSMCのシェアは62%に
TrendForceによると、2023年の世界のファウンドリー市場は1174億7400万米ドルに達し、TSMCはそのうち59%という圧倒的なシェアを有していた。同市場は2024年には1316億5500万米ドルに増加し、TSMCのシェアも62%に拡大する見込みだ。
TrendForceによるとTSMCは、米国、日本、ドイツを先進的で成熟した生産拠点として戦略的に選んできた。中でも日本でのプロジェクトが最も速いペースで進んでいて、一部は当初予定より前倒しで進行しているという。
2024年2月24日には、TSMCの日本で初めての拠点となる熊本第一工場(Fab-23 Phase1、熊本県菊陽町)が開所した。同工場では22/28nmおよび、12/16nmプロセスの製品を生産し、生産能力は300mmウエハー換算で月産4万〜5万枚となる見込みだ。さらに、2024年2月6日には、熊本第二工場(Fab-23 Phase2)の建設計画を発表している。
半導体エコシステムを構築できるか 中心は九州/東北/北海道
日本の半導体産業の今後について、TrendForceは「産官学一体での努力によって、日本は包括的な半導体製造エコシステムを構築できる目前まで来ている」と指摘。特に九州地方、東北地方、北海道が中心地になるとしている。
九州には半導体生産に不可欠な水資源が豊富で、ソニーグループ、ローム、三菱電機、SUMCO、東京応化工業といった企業が拠点を構えている。TrendForceは、TSMCが進出先として九州を選んだのも、主にこうした水資源が決め手だったと見ている。
東北では、東北大学に豊富な人材がいて、半導体の研究開発にも注力している。東北のこうした利点にはローム、ルネサス エレクトロニクス、Powerchip Semiconductor Manufacturing Corporation(PSMC)といった企業が着目している。
北海道では、Rapidusが千歳市に工場を建設する予定で、2nmプロセスの最先端半導体製造を目指しで、経済成長につなげる計画だ。
TSMCが日本でさらに生産拠点を増やすと見る向きもあり、TrendForceは建設地の候補として福岡など九州の他の地域や大阪も挙がっていると言及。TrendForceによると、この「第三工場(Fab-23 Phase3)」では当初、6/7nmプロセスを中心に製造する計画だったというが、5nmや3nmプロセスを採用する可能性もあるという。また、TSMCは茨城県つくば市に3D ICの研究拠点「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」を設立したほか、日本に先端パッケージング工場を置く可能性についても報じられている。TrendForceはTSMCのこうした動きについて「前工程の製造から後工程のパッケージングやテストまで包括的なプレゼンスを確立するというTSMCの姿勢を示すもので、これは半導体産業における日本の地位を揺るぎないものにするだろう」としている。
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