「2030年に1兆ドルの市場」を目指すなら、半導体工場はまだ足りない:SEMIのCEOが主張(3/3 ページ)
SEMIのプレジデント兼CEO(最高経営責任者)を務めるAjit Manocha氏は、米国EE Timesによるインタビューで、「半導体業界が2030年に1兆米ドルの市場規模を達成するには、工場の生産能力がまだ不十分である」と指摘した。【訂正あり】
PFASの禁止が半導体業界に与える影響は
Manocha氏はPFASについて、「半導体業界は総じて責任感が強い業界だ。PFASは多くの工程で使われているが、われわれがそれを環境中に排出することはない。もし規制当局がPFASの使用を禁止すると、パンデミックの時と同じように、半導体不足で世界が機能停止に陥るだろう」との懸念を示した。「半導体業界は、規制当局や大学などと協力し、人間や地球に害を与えないようにする必要がある。PFASは、われわれが直面している危機の一つだが、明るいニュースもある。世界中の政策立案者が半導体業界と協力し、社会に害を与えず、かつ半導体業界を存続させる方法を模索していることだ」(同氏)
AI/量子コンピューティングでは省エネが鍵に
Manocha氏は、「AIに関する最大の問題は、膨大なエネルギーを消費するという点である。この問題への対処が必要だ。半導体の低消費電力化と高速化を実現できる材料を開発しない限り、AIの新しい波にはうまく乗れないだろう。さらに量子に関しては、特に室温で量子コンピュータを動作させるという点が大きな課題となっている。放熱や省エネの問題を解決しなければ、AI/量子コンピューティングは低迷していくだろう。大きなチャンスが広がっているが、問題も非常に大きい」と述べる。
【修正:2024年3月25日10時15分 当初、「半導体の冷却と高速化を実現できる材料」と翻訳していましたが、「半導体の低消費電力化と高速化を実現できる材料」が、より適切な訳出と判断しました。お詫びして訂正致します。】
量子コンピューティングとその市場機会は、2050年までに5兆米ドル規模に拡大するともいわれている。Manocha氏は、「私が量子コンピューティングに感銘を受けたのは、例えば津波や地震のような事象をより明確化することができるからだ。量子コンピューティングが、あらゆる場所における問題の発生を予測できるようになれば、人々は自らの運命をもっとうまくコントロールできるようになる。量子コンピューティングは、人類に多くのメリットをもたらしてくれるだろう」と強調した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「独自のプロセッサがなくなる」 欧州が救いを求めるRISC-V
英国のEU離脱や、ソフトバンクによるArmの買収などを経験したEUは、「EU独自のプロセッサがなくなる」という危機感を高めている。そのEUが救いを求めているのが「RISC-V」だ。 - 2023年の世界半導体売上高ランキング、Intelが3年ぶりにトップ
米国の市場調査会社Gartnerによると2023年の世界半導体売上高(速報値)ランキングで、Intelが3年ぶりにSamsung Electronicsを上回り、売上高トップとなった。メモリベンダーの落ち込みは顕著で、前年5位のMicron Technologyはトップ10外に。一方急成長のNVIDIAが初のトップ5入りを果たした。 - 半導体生産能力、2024年に初の月産3000万枚台へ
SEMIは、2024年の世界半導体生産能力が初めて月産3000万枚(200mmウエハー換算)台に達するとの予測を発表した。主な成長要因として最先端ロジックとファウンドリーの生産能力増強、生成AI(人工知能)やHPC(高性能コンピューティング)などに向けたチップ需要の回復を挙げた。 - 半導体業界を変える? SiCウエハーを活用し「グラフェントランジスタ」を製造
米ジョージア工科大学と中国天津大学の研究チームは、グラフェンを用いた機能性半導体の作成に成功したと発表した。SiCの結晶面で成長する単層のグラフェン(エピタキシャルグラフェン)を用いたものだ。 - AppleがマイクロLED搭載「Apple Watch」の開発を中止か 戦略見直しを迫られたams OSRAM
ams OSRAMは、マイクロLED戦略の中核となるプロジェクトが「予期せぬキャンセル」となったことから、同戦略の見直しを行うと発表した。同社は顧客名を明かしていないが、市場調査会社などはAppleがマイクロLED搭載「Apple Watch」開発を中止したことによるものと見ている。