エッジAIの開発に必要なソフトやツールを統合、STが発表:「ST Edge AI Suite」
STMicroelectronics(以下、ST)は、tinyML開発ツールチェーンを単一スタックに統合した「ST Edge AI Suite」を発表した。2024年前半の提供開始を予定している。ST Edge AI Suiteは、STのマイコンやマイクロプロセッサ、機械学習(ML)対応MEMSセンサーなど、今後のSTの全てのハードウェアに対応するという。
STMicroelectronics(以下、ST)は、tinyML開発ツールチェーンを単一スタックに統合した。この「ST Edge AI Suite」は、STのマイコンやマイクロプロセッサ、機械学習(ML)対応MEMSセンサーなど、今後のSTの全てのハードウェアに対応するという。
エッジAI用に開発した全てのツールを組み込んだエコシステム
STのマイクロコントローラーおよびデジタルICグループのプレジデントを務めるRemi El-Ouazzane氏は、「優れたハードウェアは、適切なソフトウェア機能と組み合わせて初めて、その潜在能力を発揮する。個々の部品ではなく、エッジAI(人工知能)システムについて考える必要がある。これには、アプリケーションに適したレベルの性能とコスト、消費電力を実現するために必要なハードウェアとソフトウェアの両方が含まれる」と述べている。
ST Edge AI Suiteは、STの「STM32」マイコンやマイクロプロセッサ、そして「STM32N6」や「STM32MP2」などの専用のAIアクセラレーションを備えたマイコン、車載マイコン「Stellar」「ISPU(インテリジェントセンサープロセッシングユニット)」(DSP搭載MEMS IMU[慣性測定装置])、その他のML対応MEMSセンサーを含むSTハードウェア向け統合AIツールチェーンだ。
「NanoEdge AI Studio」や「STM32Cube.AI」など、これらの異なる製品ライン向けに過去10年間に開発されたツールやライブラリは、新しいST Edge AI Suiteに組み込まれる。そしてSTの開発クラウドには、STM32ボードの他、MEMS製品やStellar MCUも盛り込まれることになる。
El-Ouazzane氏は、「組み込みシステムでは、RAMやフラッシュ、バッテリー容量など、少ないリソースを最適化する必要がある。STは、ニューラルネットワークモデルを圧縮し、そのモデルを量子化して性能を向上させるための最適化ソフトウェアに多額の投資を行って、当社の顧客が、開発したモデルを最大限に活用できるようにした」と述べている。
STのアナログ、MEMS、センサーグループのプレジデントを務めるMarco Cassis氏によると、開発者は独自のデータを活用するか、独自のモデルを活用するかのいずれかのアプローチを選ぶことができるという。
Cassis氏は、「ST Edge AI Suiteはシンプルだ。使用するSTデバイスが何であれ、エントリーポイントは1つだ。幅広い選択肢があるツールにはガイド付きナビゲーションが用意されていて、あらゆるSTデバイスに使用可能で、スキルの向上と技術のより効果的な実装を支援する活発なコミュニティーと、包括的な教育リソースを提供する」と説明している。
新しい構成要素である「Edge AI Core」は、あらゆるSTデバイスにニューラルネットワークを最適化して展開できるように設計されている。
El-Ouazzane氏は、「Edge AI Coreは、ソフトウェアとハードウェア間の最高の相互作用と性能を保証する。これは、エッジでのMLベンチマークMLPerf Tinyで評価された実証済みの技術で、現在、全てのSTエッジAI対応デバイスで利用可能だ」と述べている。
MLPerf Tinyの結果で実証されているのは、STの「Arm Cortex-M」ベースのマイコン向けのMLライブラリで、STの顧客には無償で提供される。ただし、STは今後、競合のCortex-Mデバイス向けのMLライブラリも提供する予定で、その場合、導入および生産に関する特別なライセンス契約が必要となる(つまり、無償提供ではない)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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