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半導体の好況は「NVIDIAのGPU祭り」による錯覚? 本格回復は2025年以降か湯之上隆のナノフォーカス(71)(2/4 ページ)

半導体の世界市場は2023年に底を打ち、2024年には本格的な回復基調に乗ると見られていた。だが、どうもそうではないようだ。本稿では、半導体の市況が回復しているように“見える”理由を分析するとともに、TSMCなどのファウンドリーの稼働状況から、本当の市場回復が2025年にずれ込む可能性があることを指摘する。

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TSMCの四半期の出荷額とウエハー出荷枚数

 図3に、TSMCの2023年Q4のノード別の売上高比率および7nm以降の売上高推移を示す。

 TSMCは、7nm以降を先端ノードと位置付けているが、2023年Q4には、7nmが17%、5nmが35%、3nmが15%となっており、先端ノード合計で67%を占めた。また、四半期毎の先端ノードの売上高は、2021年Q1から増大し、2022年Q4以降にいったん減少するが、2023年Q2で底打って再び上昇に転じ、同年Q4には過去最高を更新している。

図3 TSMCの2023年Q4のノード別売上高比率と先端ノードの売上高推移
図3 TSMCの2023年Q4のノード別売上高比率と先端ノードの売上高推移[クリックで拡大] 出所:TSMCの2023年Q4の決算報告書のスライド

 つまり、先端ノードの売上高を見れば、TSMCは絶好調ということになる。では、TSMC全体の四半期の売上高とウエハー出荷枚数はどのようになっているだろうか(図4)。

図4:TSMCの四半期の出荷額とウエハ出荷枚数(〜2023年Q4)
図4:TSMCの四半期の出荷額とウエハ出荷枚数(〜2023年Q4)[クリックで拡大] 出所:TSMCのHistorical Operating Dataを基に筆者作成

 TSMCにおける四半期の出荷額とウエハー出荷枚数のグラフの上下動はおおむね一致している。2000年のITバブルにピークがあり、2008年のリーマン・ショック後に落ち込み、2018年のメモリバブル崩壊後にも落ち込んでいる。

 ところが、2022年Q3のコロナ特需のピークの後の挙動が異なっている。出荷額は202億米ドルでピークアウトした後に大きく落ち込むが、2023年Q2に157億米ドルで底打って上昇に転じ、同年Q4にはピーク時の97%の197億米ドルまで回復している。

 一方、四半期のウエハー出荷枚数は、2022年Q3に397万枚でピークアウトした後に大きく落ち込み、2023年Q2に292万枚で底を打つが、その後も横ばいが続き、同年Q4でもピーク時から約100万枚少ない296万枚にとどまっている。

 TSMCが生産している半導体のうち、最も多いのはLogicである。そして、TSMCの2023年Q4の売上高は、先端ノードでは過去最高を記録し、全体でも過去最高の97%まで回復している。にもかかわらず、四半期のウエハー出荷枚数は、ピーク時より100万枚以上も少ない。つまり、TSMC全体の工場稼働率は75%程度しかないということになる。

 世界の半導体全体では、Logicの出荷個数がコロナ特需のピーク時の約65%に低迷していた。これに符合するように、TSMCの四半期のウエハー出荷枚数はピーク時より100万枚以上少なく、工場稼働率は約75%に低迷していると考えられる。

 ここから、世界の半導体市況が本格回復するためには、Logicの出荷個数が大幅に増大することが必要であり、そのためには、TSMCを筆頭とするファウンドリーの稼働率がフルキャパに近づかなければならないだろう。

 では、それは一体いつなのか?

主要なファウンドリーの稼働率の予測

 2023年12月14日、台湾の調査会社TrendForceのセミナー『産業フォーカス情報』が東京ベイ有明ワシントンホテルで開催された。そのセミナーで、TrendForceのアナリストのJoanna Chiao氏が、「TSMCの世界戦略と2024年半導体ファウンドリ市場の展望」の発表を行った。その中で、Joanna Chiao氏はファウンドリーの稼働率の予測について語った(図5)。


図5:主なファウンドリーの12インチファブの稼働率の推移[クリックで拡大] 出所:Joanna Chiao(TrendForce)、「TSMCの世界戦略と2024年半導体ファウンドリ市場の展望」(TreendForce産業フォーカス情報、2023年12月14日)のスライド

 この予測によれば、2022年Q2頃までは、全てのファウンドリーの稼働率は90%以上だった。ところが、同年Q4にかけて多くのファウンドリーの稼働率が急激に低下する。

 その中で、TSMCだけが稼働率99%で踏ん張っていたが、2023年Q4には76%に低下する。このTSMCの稼働率は、四半期のウエハー出荷枚数から導き出した稼働率約75%とほぼ一致する。

 そして、TSMCを含む主なファウンドリーの稼働率は、2024年Q4になっても、フルキャパにならないと予測されている。最も稼働率が向上するTSMCでさえ85%にとどまっている。ファウンドリーの売上高世界2位のSamsung Electronics(以下、Samsung)の稼働率は67%という低水準と予測されている。

 つまり、この予測によれば、主要なファウンドリーの稼働率は2024年末になってもフルキャパにならない。となると、2024年中にLogicの出荷個数が大きく増大することは期待できず、従って、世界の半導体市況が本格回復するには至らないと思われる。

 では、どうして、TSMCをはじめとする主なファウンドリーの稼働率がこれほど低調なのだろうか?

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