ルネサス、独自開発RISC-Vコア搭載の汎用マイコン第1弾を発売:「RISC-Vマイコンが現実的な選択肢に」(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは、独自に開発したRISC-Vベースの32ビットCPUコアを搭載した初の汎用マイコン「R9A02G021」を発売した。
ルネサスとパートナー企業の開発ツールを利用可能
R9A02G021はルネサスのマイコン製品群であるRAシリーズやRXシリーズなどの汎用マイコンと同様に、ルネサスとパートナー企業が提供する開発環境を利用できるため、開発工数やコストの削減を見込めるという。ルネサスは統合開発環境(IDE)である「e2studio」のほか、コードコンフィグレーター、LLVMコンパイラー、高速プロトタイピングボード(FPB)といったツールを用意しているという。パートナー企業のツールとしては、IAR SystemsのIDE「IAR Embedded Workbench」とデバッグプローブ「I-jet」、SEGGER MicrocontrollerのIDE「Embedded Studio」とデバッグプローブ「J-Link」、フラッシュプログラマー「Flasher」が利用可能だ。また、FPBのユーザマニュアルとスターターガイドに加え、FPBの回路図、部品表(BOM)、ガーバーファイルもダウンロードできるという。
R9A02G021と他のルネサス製品を組み合わせたソリューションである「ウィニングコンビネーション」として、ルネサスはDC-DCコンバーターやIGBTドライバー、Wi-Fi SoC(System on Chip)などを組み合わせた「スマート圧力鍋」ソリューションを紹介している。インターネットに接続してアップデートできる最新の家電に向けた、「コスト効率が高くコンパクトなモジュール型のソリューション」(同社)だという。
RISC-Vマイコンは「現実的な選択肢」に 市場成長も加速するか
これまでルネサスはRISC-V製品として、Andes TechnologyのCPUコアを搭載した32ビット音声認識用ASSP、モータ制御用ASSP、64ビット汎用マイクロプロセッサ「RZ/Five」を提供してきたが、2023年11月、自社でRISC-Vベースの32ビットCPUコアを独自開発したと発表。今回、開発環境および量産出荷体制の整備が完了したとして、その独自開発CPUコアを搭載した初めての製品を発売する。ルネサスは、これによってRISC-Vマイコンが「現実的な選択肢」になったとしている。
ルネサスのエンベデッドプロセッシング第一事業部で事業部長を務めるDaryl Khoo氏は、「複雑な設計課題を解決する上で、性能/消費電力/メモリ/CPUの選択において妥協せざるを得ない状況がある。ルネサスはオープンアーキテクチャ製品を使いたいと考える顧客に、RISC-Vマイコンという選択肢を提供する」とコメントしている。
フランスの市場調査会社Yole GroupのプリンシパルアナリストであるTom Hackenberg氏は、これまでのマイコン市場におけるRISC-V採用製品について「市場の約85%を占める大手マイコンサプライヤーからは強力な製品が提供されていなかった」と指摘。「ルネサスがマイコン製品群にRISC-Vマイコンを投入し、必要なサポートを提供することで、RISC-V市場はようやく成長を加速し始める態勢が整った。他の主要ベンダーがルネサスに続くことで、RISC-Vマイコンは2029年末までに市場全体の10%に近づき、その後も大きな成長が期待できる」と分析している。
ルネサスは今後も、RISC-Vマイコンのラインアップ拡充を図る計画だ。
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