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ルネサス、初の独自開発32ビットRISC-V CPUコアを発表競合に先駆けて開発、製品化へ

ルネサス エレクトロニクスが、RISC-Vベースの32ビットCPUコアを独自開発した。同社は既にAndes TechnologyのRISC-Vコアを使用した製品は発売しているが、RISC-V CPUコアの独自開発は初となる。

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 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2023年11月30日、RISC-Vベースの32ビットCPUコアを自社で独自開発したと発表した。同社は「自社開発のコアによって、急成長中のRISC-V市場のリーダーとしての地位を確固たるものとしていく」と述べている。

ルネサスが独自開発した32ビットRISC-V CPUコアの機能ブロック
ルネサスが独自開発した32ビットRISC-V CPUコアの機能ブロック[クリックで拡大]出所:ルネサス エレクトロニクス

 同社は、今回の独自開発コアによって、IoT(モノのインターネット)機器、家電、ヘルスケアや産業用システム向けにオープンでフレキシブルなプラットフォームを提供していく計画としている。ルネサスの32ビットマイコンとしては、独自のRXコアを搭載した「RXファミリー」と、Arm Cortex-Mコアを搭載した「RAファミリー」があるが、今後ここに、新たなRISC-V CPUコアを搭載した製品が加わることになる。

 ルネサスが開発したRISC-V CPUコアは、コードサイズを低減しながら性能を向上させる拡張機能を含め、命令処理効率の指標である「CoreMark/MHzスコア」で3.27を達成。「小型の組み込みシステムをターゲットにしつつも、高い演算性能を実現し、昨今の組み込みアプリケーションのニーズに応える」としている。また、高いフレキシビリティを有し、マイコンのメインCPUとしてだけでなく、SoC(System on Chip)に内蔵するサブコントローラーや、特定用途向け汎用製品(ASSP)のコアなどにも採用可能という。

 このほかの特長としては、省スペース設計によって、面積が小さく、コストへの影響が小さいというメリットや、動作電流およびスタンバイ時のリーク電流を低減したことなどを挙げている。

Armで出遅れたルネサス、RISC-Vは「業界に先駆けて独自開発」

 フランスの市場調査会社Yole Groupによれば、2022年のマイコン市場ではルネサス、Infineon Technologies(以下、Infineon)、NXP Semiconductors(以下、NXP)がいずれもシェア18%で並び、その後ろにSTMicroelectronics(15.5%)がつく形で激しい競争を繰り広げている。

2022年のマイコン市場のメーカー別シェア
2022年のマイコン市場のメーカー別シェア[クリックで拡大]出所:Yole Intelligence

 マイコン市場で高いシェアを維持するルネサスだが、十数年前から競合がArmベースのCPUコア導入を進める中、独自CPUコア搭載マイコンを中心とした事業展開を継続、本格的なArmマイコン参入は2019年10月と、かなり後れを取っていた。同社のIoT・インフラ事業本部エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるSailesh Chittipeddi氏も、2022年2月にEE Times Japanが行ったインタビューの中で、この点を認め、「RISC-Vでも後れを取ることはできない」などと述べている。

 そうした中、ルネサスは2020年にAndes Technologyとの技術IP(Intellectual Property)提携を発表。これまで32ビットの音声制御用ASSPやモータ制御用ASSP、64ビット汎用マイクロプロセッサ「RZ/Five」などを相次いで市場に投入してきた。そして今回、その次のステップとして、RISC-V CPUコアを自社開発したとしている。

 競合を見ると、シェアを競う前述の主要メーカーらは現在、RISC-Vベースのコア/製品は有していない。ただ、2023年8月にはInfineonとNXPがBosch、Nordic Semiconductor、Qualcomm Technologiesと共同で出資し、RISC-Vベースのプロセッサを開発する企業をドイツに設立すると発表している。ルネサスは今回のプレスリリースで「最近では、多くのマイコンプロバイダーが、共同出資関係を結んでRISC-V製品の開発を加速させようとしているのに対し、ルネサスはすでに自社で新しいRISC-Vコアの開発に成功した」と強調。業界に先駆けて独自開発したコアによって、市場での優位性を強化していく狙いだ。

独自RISC-V CPUコアの概要

 アーキテクチャとしては、RV32IまたはRV32Eを選択し、利用可能な汎用レジスタの数を最適化することが可能。また、乗算(および除算)演算を高速化/最適化するM拡張、RTOSベースのシステムで一般的な並行処理や排他アクセス管理の基盤として役立つA拡張、16ビットのみでエンコードされる圧縮命令のC拡張、ビット操作のための複数の命令を追加するB拡張も実装している。

 さらに、スタックメモリオーバーフローを検出し防止する役割がある「スタックモニターレジスタ」や、コードの挙動を観察し制御ループ中に実行される可能性の高い次の命令を動的に推測する「動的分岐予測ユニット」の他、複数のパフォーマンスモニターレジスタを搭載。アプリケーションソフトウェアの信頼性や平均的なコード実行スループットの向上、デバッグの容易化などにつなげている。

 同社は「この新しいCPUは、ルネサスの既存のマイコンのポートフォリオに追加的かつ補完的な選択肢を生み出す、次のステップへの要となるものだ」と述べている。

 新しいRISC-V CPUコアを使用したマイコンのサンプル出荷は既に一部のユーザー向けに開始していて、新製品と関連する開発ツールは2024年第1四半期に一般に発売する予定だ。

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