IntelとAMDのチップ戦略が「逆転」? 最新Core UltraとRyzenを分解:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(81)(2/4 ページ)
今回は、IntelとAMDのモバイル向けCPUの新製品を分解する。Intelの「Core Ultra」(Meteor Lake世代)はチップレット構成、AMDの「Ryzen 8000G」(Zen 4世代)はシングルシリコンになっていて、両社のこれまでの傾向が“逆転”している。
Core Ultraに残る、MovidiusとArcの気配
図4は2010年代後半(2017年以降)における、IntelのメインCPU(「Core i」シリーズ)以外のチップとCore Ultraの関係をまとめたものだ。
Intelは2010年代を通じてコアコンピタンスであるCPUに加えて第2第3の成長路線を探し続けた。その中の一つがVision Processingである。2016年にはAIやVision Processorで実績のあるMovidiusを、2017年にはADAS(先進運転支援システム)向けで実績の大きいMobileyeを買収した。2022年にはCore iシリーズの組み込みGPUではなく、別シリコン化された専用GPUとなる「Intel Arc」の販売に踏み切っている。MovidiusのVision ProcessorもArcもIntelのファブで製造されておらず、ともにTSMC製造となっていた。Core UltraのSoC TileとGPU Tileが、ともにTSMC製造となっているのは、Movidiusの開発チーム、Arcの開発チームがそれぞれSoC TileとGPU Tileの開発を担当したからだと思われる。実際、MovidiusのプロセッサとSoC Tileは、内部のCPUやメディアプロセッサ、NPUの配置が似通ったものになっている。またArcも2022年に発売された「Intel Arc A380」の内部と外観で同じ回路構成となっている。
「Core i9 14900K」と「Core Ultra 9」を比較する
表1は2023年後半に発売された「Core i9 14900K」(「Intel 7」で製造されたシングルシリコン CPU+GPU)とCore Ultra(複数の製造プロセスを適用した5シリコン CPU+GPU+NPU)のシリコン面積の比較である。Core Ultraは、従来プロセッサのおよそ倍のシリコン面積となっていて、テスト回数も増えることからコスト高のハードウェアになっていることは間違いない。シリコンインターポーザーを除いた機能シリコン部の面積はほぼ同等だが、デジタルチップを機能ごとに分割したチップレットは効率が良いとはいえないものになっている。
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