IntelとAMDのチップ戦略が「逆転」? 最新Core UltraとRyzenを分解:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(81)(3/4 ページ)
今回は、IntelとAMDのモバイル向けCPUの新製品を分解する。Intelの「Core Ultra」(Meteor Lake世代)はチップレット構成、AMDの「Ryzen 8000G」(Zen 4世代)はシングルシリコンになっていて、両社のこれまでの傾向が“逆転”している。
シングルシリコンに「戻った」AMDのRyzen
図5は2024年1月にAMDから発売された「Ryzen 8000G」シリーズの様子である。8700G、8600Gなどコア数や周波数の異なるバージョンが同時に発売されている。前世代の「Ryzen 7000X」シリーズはチップレットで構成されていたが、8000Gシリーズはシングルシリコンとなっている。ここ数年、“チップレットといえばAMD”といわれるほどに、AMDのプロセッサはシリコンを組み合わせてバリエーションを広げるチップレット製品が多かった。最上位のEPYCからローエンドまで同じCPUシリコンを用い、その個数を変えることでハイミドルローをラインアップしていたからだ。しかしRyzen 8000Gではシングルシリコンになっている。
図6はAMDの前世代「Ryzen 5 7600X」(チップレット)と「Ryzen 7 8700G」のシリコンを比較した結果である。前者はTSMCの5nm、6nmを組み合わせた2シリコン構成であったが、後者はTSMCの4nmシングルシリコンとなっている。L3キャッシュ容量など一部デグレードしている部分もあるが、GPUコア数を増加する、AI-NPU機能を搭載する、などアップグレードしている項目もある。シングル化することでパッケージ構造も簡素化したものになっている(パッケージ層数などが削減されている。断面解析の詳細はテカナリエレポートに掲載)。
Core UltraとRyzen 8000G、シリコン面積の差は?
表2は2023年12月発売のIntel Meteor Lake Core Ultraと2024年1月発売AMD Ryzen 8000Gの機能、シリコン数、シリコン総面積の比較である。機能は同一ではないので、厳密には対等の比較にはなっていないが、ともにAI機能を備えた最新仕様になっている。AMDのシリコン面積に対してIntelのシリコン面積が約2.8倍になっていることが最大の差である。デジタル回路であるCPUとGPU、NPUを1シリコンに搭載するのはスマホやカメラなどのプロセッサでは一般的だ。IntelがCPU、GPU、NPUを1シリコン化しなかったことについてはさらに言及すべきではあるが、ここでは省略する。
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