ペロブスカイト型ニオブ酸ルビジウムを高圧で合成 新たな強誘電体開発の鍵に:30分間、4万気圧、900℃で熱処理
芝浦工業大学は、ファインセラミックスセンターや東北大学、学習院大学、東京大学と共同で、高圧法により「直方晶ペロブスカイト型のニオブ酸ルビジウム」を合成することに成功した。
ペロブスカイト型構造にセシウムイオンを取り込むことも可能
芝浦工業大学工学部先進国際課程の山本文子教授らによる研究チームは2024年4月、ファインセラミックスセンターや東北大学、学習院大学、東京大学と共同で、高圧法により「直方晶ペロブスカイト型のニオブ酸ルビジウム」を合成することに成功したと発表した。
現在、ほとんどのコンデンサーにはチタン酸バリウムが用いられている。ところが、120℃以上になると特性が低下するといった課題もある。これを解決するため、新たな物質を合成する研究が進んでいる。
山本教授らはこれまで、高圧合成法を用いて新物質の開発に取り組んできた。物質を高温高圧の状態から急冷すれば、高圧相を常圧下にも取り出すことが可能となるからだ。今回は、常圧相ニオブ酸ルビジウムを「4万気圧、900℃、30分」という条件で熱処理し、直方晶ペロブスカイト型のニオブ酸ルビジウムを合成することに成功した。
実験では、ペロブスカイト型ニオブ酸ルビジウムについて、−268〜800℃という温度範囲における構造の変化を、X線回折法を用いて調べた。この結果、室温以下では構造変化はなかった。そして、220℃以上では「正方晶ペロブスカイト」に、300℃以上ではより縦に伸びた形の「第2正方晶ペロブスカイト」に変化し、420℃以上になるとペロブスカイトではない常圧相に戻ることを確認した。一連の相転移は、第一原理計算により予測された構造安定性で説明できるという。特に第2正方晶は、負の圧力を与えた計算で得られた結晶構造と一致した。
今回得られた高圧相は、ニオブ酸カリウムと同じような強度の第2高調波発生が観察されたことから、極性を持つ構造であることを確認した。比較的高い比誘電率が得られることも分かった。誘電率については、試料密度を高めていくとニオブ酸カリウムと同等かそれ以上の値を実現できるとみている。また、高圧合成法を応用すれば、ペロブスカイト型構造にセシウムイオンを取り込むことも可能だという。
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