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CHIPS補助金でTSMCがAI半導体製造へ 米国は半導体リーダーに返り咲けるか?課題は人材不足(3/3 ページ)

TSMCに対する米国の補助金によって、米国は初のAI(人工知能)チップの生産能力を手にし、技術的リーダーシップを確立する強力なチャンスを得るとみられる。ただし、米国の半導体産業の復活のためには労働力不足が依然として大きなマイナス要因だという。米国EE Timesのインタビューでアナリストらが語った。

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アリゾナで半導体エコシステムが成長

 情報筋が米国EE Timesに語ったところによると、半導体設計企業や材料サプライヤーなど、半導体エコシステムの数十社がフェニックスでの事業開設の準備を進めていて、フェニックスは米国の主要な産業ハブの1つになろうとしているという。Raimondo氏はCNBCに対し、「TSMCに製品やサービスを提供するために、アジアから十数社のサプライヤーが来る予定だ」と語っている。

 米国の市場調査会社Tirias Researchの主席アナリストを務めるJim McGregor氏はEE Timesに対し、「IntelとTSMCが工場を建設しているアリゾナは今、半導体に熱狂している」と語った。同氏によると、フェニックスにはIntelやMotorola、onsemi、Microchip Technologyなどによる過去の投資を含む既存の製造エコシステムがあるという。

 しかし、他のアナリストからは「TSMCが米国で2nmプロジェクトを進めたとしても、米国は先進半導体を自給自足するサプライチェーンを構築できない」という声もある。SemiAnalysisのアナリストであるJeff Koch氏は米国EE Timesに対し、「CHIPS法は米国内の半導体サプライチェーンの改善に大きく貢献したが、米国は主要分野でまだ遅れをとっている。Intelがプロセス技術の差を縮められない限り、先進ロジックはTSMCに依存することになる」と語った。Koch氏はさらに「Micron Technologyが米国で先進のメモリチップを量産するには数年かかるだろう。米国はフォトレジストを日本に、リソグラフィ装置をオランダに依存している」と付け加えた。

 McGregor氏は「特に後工程のアセンブリやテスト工程は、現在主にアジアで行われている。この工程への投資は後回しになる可能性が高いが、建設にそれほど時間はかからないだろう」と分析する。

最先端技術を手放さない台湾と韓国

 Koch氏によると、前工程/後工程の技術と施設、そして人材面でも世界をリードする台湾と韓国が優位性を手放すことは考えにくいという。同氏は「米国を半導体業界のリーダーという立場に戻すことができるのは、米国企業だけだ。TSMCは最先端プロセスを常に台湾に置いていて、輸出するのは古いプロセスのみ。最先端の半導体技術は政治的影響力の強力な源泉で、台湾や韓国の政府がそれを手放すとは思えない」と指摘する。

 Triolo氏は、アジアの半導体業界をリードするTSMCとSamsung Electronicsが自国/地域内での先端プロセスの開発と製造拠点拡大を続けると見て、「米国での拠点をアップグレードするより先に、台湾や韓国の中で大きな生産能力を得るだろう」と指摘する。

 「米国当局は台湾政府とTSMCに対して、最先端プロセス生産を早くアリゾナで始めるよう、相当な圧力をかけている。これがアリゾナ第3工場に2nm以下のプロセスを導入するという発表の理由だ。ただし、TSMCが米国に置く製造拠点は2030年までに全て建設されて大量生産を始めたとしても、それは台湾での生産能力のほんの一部、おそらく10%未満にしかならないだろう」(Triolo氏)

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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