米国の「意固地な」半導体規制は中国の自立を助長するだけ:Huawei向けの輸出許可を取り消し(3/3 ページ)
米バイデン政権は、Huaweiに対する半導体の輸出許可を取り消す決断を下した。これに対し中国は強く反発。米中の分断はさらに深まると予測される。
代替技術としての「RISC-V」 採用へは長い道のり
x86アーキテクチャチップへの輸出規制に伴い、HuaweiはRISC-Vのような代替となる命令セットアーキテクチャに目を向ける可能性もある。RISC-Vは勢いを増しているオープンソースのISAで、より優れた柔軟性をもたらす上に、外国の管理を避けられる可能性がある。x86チップの直接的な代替にはならないものの、HuaweiがRISC-Vを採用すれば、米国への依存度を弱めた半導体エコシステムの実現に向けた長期的な移行の前兆になり得る。
RISC-V InternationalのCEOであるCalista Redmond氏は、2023年のEPSNewsとの独占インタビューの中で「中国では、RISC-Vをベースとする戦略を立てる企業が増えている」と分析した。
さらに、HuaweiはArmのRISCアーキテクチャを、自社のノートPCに採用することも検討できるだろう。x86の直接的な代替ではないものの、Armプロセッサはモバイル機器に幅広く採用されている。最近ではクラウドサーバにも用いられており、数多くのタスクのパフォーマンスを向上させている。MediaTekは既にWindowsやChromeOS向けにArmベースのプロセッサを販売している。
世界の消費者への影響
米国の今回の規制強化は、ハイテクの世界市場においてさらなる分断を招く恐れがある。エコシステムが米国派と中国派に分かれるということだ。これにより、世界中の技術開発や協業、消費者の選択に重大な影響をもたらす可能性がある。
2023年、中国外務省の広報官であるMao Ning氏は、米国に対し「ロングアーム管轄権(long-arm jurisdiction)」の悪用と一方的な制裁を止めるようと強く要請し、そうした米国の動きが多国間主義と国際貿易を弱体化させていると主張した。
現在の状況によって、開かれた対話と米中間の連携の重要性が浮き彫りになった。対立の激化を避け、世界全体に利益をもたらすイノベーションを確実に継続するためには、「国防に関する懸念と、健全な技術環境の醸成との間でバランスを見いだすこと」が何よりも重要になる。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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