マイクロOLEDドライバーICまで内製 Appleチップだらけの「Vision Pro」:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(83)(1/4 ページ)
Appleが2024年に発売した「Vision Pro」を分解した。Appleは、自社製品に使う半導体の内製化を進めていて、その範囲はディスプレイドライバーICにまで及んでいることが明らかになった。本稿の最後には、同年5月に発売された「M4」プロセッサ搭載「iPad Pro」の分解の結果も掲載している。
Appleは2024年前半に2つの大型製品を発売した。今回はAppleの2024年前半の2製品について報告する。1つ目は2月2日に米国で発売されたApple初のVR(仮想現実)機器である「Vision Pro」。2つ目は2024年5月15日に発売された「M4」プロセッサを採用する「iPad Pro」だ。
センサーやモーターだらけの「Vision Pro」
図1はVision Proの様子である。実際にはヘッド固定用ベルトや固定用アダプターなどを付加して装着するが、外した状態が左下だ。Vision Proの前面にはGorilla Glassが装着されており、Gorilla Glassを取り外すとさらにもう一枚Glassが備わっている。2枚のGlassを取り外すと右下の状態になる。また本体両サイドには2Wayのスピーカーが備わっている。スピーカーサイズは30mm x 20mmと6mm x 3mmとなっている。フロント中央には大型(幅150mm)ディスプレイが備わっている。フロントディスプレイは目のアニメーションなどを表示できる。フロントディスプレイ駆動用のドライバーICは台湾メーカー製だ。
図2はVision Proのフロント側から見たセンサーなどの配置の様子である。センサーの塊となっている。センサーはほぼ左右対称に配置されているがマイクロフォンなどは必ずしも対象にはなっていない。ほぼ全てのセンサーは後述する「R1」プロセッサに接続されている。図は文字が多く非常にビジーで読みにくいが、紫色文字はCMOSカメラである。外部カメラが8基、眼球を観察するカメラが4基で、計12基が搭載されている。下部中央にはVCSELを用いたLiDAR Scanner、下部およびサイドには計6基のMEMSマイクロフォンが埋め込まれている。
センサーだけでなく内部には多くのモーターも埋め込まれる。内部ディスプレイの位置を調整するためのモーターや空冷ファンなどだ。モーターを制御するための半導体チップもあちこちに組み込まれている。多数のセンサーを搭載する機器は年々増えている。高度なフライトを行うドローン、ADAS(先進運転支援システム)技術を備える自動車などだ。
AppleのVision Proを最初に見たのは発売5日後の2月7日、2人のインフルエンサー、GOROman氏とニコ技深センの高須氏が、Vision Proを持ってテカナリエのオフィスを訪問してくれたときである。その時には仮想空間の構築技術はAppleが長年取り組んでいる「Apple Car」にも応用されるのではないかと話しながら、Vision Proに触れた。しかしVision Pro発売からわずか1カ月後の2024年3月に、AppleがEV(電気自動車)の開発を中止すると報じられた。
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