「AIを軸に新しい価値創出を目指す」 富士通のAI研究戦略:「世界初」2nmプロセス採用プロセッサも紹介(1/2 ページ)
富士通は2024年6月4日、AI分野における研究戦略発表会を開催し、データセンターの省電力化に貢献するコンピューティング技術や次世代グリーンデータセンター向けプロセッサ「FUJITSU-MONAKA」を紹介した。
富士通は2024年6月4日、AI(人工知能)分野における研究戦略発表会を開催した。
富士通 執行役員 EVP 富士通研究所 所長の岡本青史氏は、富士通の研究戦略について「AIを軸にした技術領域の融合による新しい価値の創出を目指す」とし、注力分野である「AI×コンピューティング」「AI×Converging Technology」「AI×Data&Security」「AI×量子コンピューター」での取り組みを紹介した。
AI活用で国内約2400万世帯の年間電力消費量を削減
AI×コンピューティング分野では、データセンターの消費電力を削減するコンピューティング技術を紹介した。
AIの活用拡大に伴いデータセンターの電力消費量が増大していて、2030年には地球の全消費電力のうち10%を占めるといわれている。AIにおける計算資源の大半はGPUで行われているが、「GPUの利用率は30%と低く、遊んでしまっている状態だ」(岡本氏)という。
富士通は、機械学習処理ベンチマーク「MLPerf HPC」の1つで世界第1位を獲得したコンピューティング技術を活用し、GPUでモデル計算すべきジョブを事前に分析した上で効率的に割り当てることにより、GPUを100%フル活用する技術を開発した。岡本氏は「この技術を活用した場合、必要なGPUの搭載数を削減し、電力消費量を年間10TWh以上削減できる見込みだ。これは、日本の約2400万世帯の年間電力消費量に相当する」と語った。
AI×Converging Technologyでは、1台の単眼カメラとLiDARを組み合わせてリアルタイムで都市の3次元デジタルツインを作成する技術を開発している。同技術により、「公共交通機関の料金を変更した際に、道路事情や人流にどのような変化が起きるか」などをシミュレーションできる。この技術の活用が想定される自治体などの利用者は、シミュレーション結果を基に施策を検討することで、環境負荷および社会/経済への影響を考慮した上で最適な施策の立案が可能になる。
デモでは、都市に設置した1台の単眼カメラで画像認識を行い、LiDARで奥行きを測定することで、リアルタイムで都市の3次元デジタルツインを作成していた。また、シミュレーションでは、公共交通機関や高速道路などの料金を変更した場合の利用率の変化などを予測し、それによる環境負荷の増減や経済活動への影響などを分析していた。
担当者によると、使用するカメラは富士通が用意したもの以外でも対応でき、LiDARは一般的に手に入るものを活用しているという。国内では山形県、国外では欧米やインドなどで実証実験を行っていて、事業化についても自治体や都市デベロッパー、公共サービス事業者をターゲットに検討を進めている。
AI×Data&Security分野では、AIの活用と共に増加している偽情報や誤情報への対策として、真偽判定統合分析システムを開発している。偽情報や誤情報の生成元を分析し、根拠情報を収集、矛盾検証や根拠分析などの統合分析を行い、情報の真偽を判定する。また、国際ガバナンスの形成に向けた議論にも参加しているという。
AI×量子コンピューター分野では、「世界最高速」(富士通)とする量子CNN(畳み込みニューラルネットワーク)技術や、量子ノイズを除去する技術などを開発中だ。岡本氏は「量子とAIどちらの強みを持つ富士通だからできる量子機械学習におけるブレークスルー技術を今後も開発する」と語った。
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