自動運転車のストレージを「一元化」するMicronの新SSD:仮想化と4ポート搭載で(2/2 ページ)
Micron Technologyは2024年4月に、新しいストレージデバイス「4150AT SSD」を発表した。4つのポートと仮想マシン対応で、自動車に「集中型ストレージ」を提供するという。
4つのポートと仮想マシン対応で「集中型ストレージ」を提供
4150AT SSDは、4つのポートと、最大64台の仮想マシンに対応するSR-IOVのサポートによって実現する重要なメリットの一つとして、集中型ストレージを提供する。これは一般的に、既存の自動車には存在しない。今日では、さまざまな種類の車載用SoCが、それぞれ異なるストレージデバイスを使用しなければならないため、開発の観点からはコストが掛かり、困難な問題となっている。
Basca氏は、「SR-IOV機能は、書き込まれたデータのセキュリティ保護を提供し、1つのドメインや機能からのデータが、故意であれ妥協によるものであれ、別のドメインや機能からアクセスできないようにする。このためSR-IOVは、ハイパーバイザーを経由せずにSoCとSSDの直接インタフェースを実現することができ、読み出し性能を約2倍に高めるという性能上の重要なメリットを提供している」と述べる。
Micronによると、自動車メーカーは、集中型ストレージを使用する(または、少なくとも自動車1台当たりのストレージデバイスの数を減らす)ことにより、自動車の複雑性を低減し、エンジニアチームに対するプレッシャーを軽減して開発コストを削減したり、製造コストの削減や、セキュリティ向上、消費電力量の削減、軽量化、総所有コスト(TCO)の削減などを実現することができ、最終的に自動車の性能と安全性を高めることが可能だという。
Basca氏は、「この集中型ストレージは、自動車が既存の分散型アーキテクチャから集中型アーキテクチャに移行するという、全体的な傾向に合致したものだ。このような移行を加速させるためのツールボックスの中のもう1つのツールだといえる。路上を走行する自動車にとっては、ケーブリングの削減や車両の軽量化など、非常に重要な多くのメリットがある」と説明した。
現在では通常、自動車のさまざまな種類のサブシステムやSoCが、それぞれ独自のストレージデバイスを備えていることから、自動車は非常に複雑化し、開発や製造、サービス提供が難しくなってきている。自動車メーカーがSSDの節約を望むため、ソフトウェアも、より小型なデバイスに実装することが求められている。Micronによれば、自動車メーカーが大容量SSDを1個搭載し、複数のSoCで使用することを決めたとしても、車載グレードのPCIeスイッチとスーパーバイザーを使用する必要があるため、結局のところコストが増加し、パフォーマンスが低下する。
「現在、SoCには、eMMC、UFS、シングルポートSSDなど、専用のストレージが接続されている。それを集中型ストレージにまとめれば多くの利点がある」(Basca氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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