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半導体製造装置でも躍進する中国 日本はシェア低下を止められるのか湯之上隆のナノフォーカス(74)(4/5 ページ)

半導体製造の前工程において、日本の半導体製造装置メーカーのシェア低下が止まらない。代わって躍進しているのが中国メーカーである。今回は、半導体製造装置のシェアの推移を分析し、中国勢が成長する背景を探る。

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2023年の各種前工程装置の企業別シェア

 図9に、2023年における前工程装置の企業別シェア、欧米日のシェア、市場規模をまとめた。


図9 前工程装置の企業別シェア、欧米日のシェア、市場規模(2023年)[クリックで拡大] 出所:モルガンスタンレー証券のデータを基に作成

 まず、欧米日の地域別のシェアを見てみると、ASMLがある欧州は、露光装置で94.2%を独占している。米国は、AMAT、Lam、KLAの3社を中心にして、ドライエッチング装置(62.3%)、CVD装置(66.0%)、スパッタ装置(87.9%)、CMP装置(70.4%)、外観検査装置(69.6%)、パタン検査装置(90.3%)でトップシェアを獲得している。

 一方、日本は、コータ・デベロッパ(94.1%)、熱処理装置(93.3%)、枚葉式洗浄装置(64.6%)、バッチ式洗浄装置(80.1%)、マスク検査装置(54.5%)CD-SEM(70.3%)でトップシェアを占めている。

 しかし、日本のシェアが高い装置は、市場規模があまり大きくない。その反面、欧米は、100億米ドルを超える市場規模の前工程装置の世界シェアを独占している。246億米ドルの露光装置はASMLが94.6%、154億米ドルのドライエッチング装置はLamとAMATで合計62.3%、127億米ドルの外観検査装置はKLAとAMATで69.6%、102億米ドルのCVD装置はAMATとLamで66.0%を占めている。

 つまり、欧米のAMAT、ASML、Lam、KLAは、市場規模の大きな装置にフォーカスし、世界シェアを独占しているのである。そこには、マーケティングに基づいたトップダウンの戦略があると考えられる。

 それでは、全ての前工程における地域別のシェアはどうなっているだろうか?

日本の前工程装置のシェア低下が止まらない

 最初に、その異変に気付いたのは、今から2年前の2022年夏であった。

 日本の半導体デバイス産業が壊滅的になってしまったことは周知の通りだが、装置と材料の競争力は高いと思い込んでいた。ところが、前工程装置全体の地域別シェアを算出してみたところ、2010年以降に、日本の装置のシェアが急降下していることが発覚したのである(『実はシェアが急低下、危機の入り口に立つ日本の前工程装置産業』、2022年7月11日)。

 そして、その翌年2023年になっても事態は変わらなかったため、『日本の前工程装置のシェア低下が止まらない 〜一筋の光明はCanonの戦略』(2023年6月23日)を寄稿した。

 さらにことし2024年、事態はより悪化した(図10)。2023年の地域別の前工程装置のシェアは、米国が41.8%、欧州が29.3%、日本が21.1%、韓国が1.7%、中国が0.6%となり、日本は欧州にも抜かれて初めて3位に転落した。


図10 前工程装置の地域別シェア(〜2023年)[クリックで拡大] 出所:モルガンスタンレー証券のデータおよび筆者の調査を基に作成

 ここで、3位の日本と4位の韓国および5位の中国の間には、まだ大きな差があると安心することは危険である。というのは、装置の売上高データにおいて、韓国と中国の正確な数値を収集することが困難であるため、もしかしたら、韓国と中国の売上高シェアはもっと大きいかもしれないからだ。

 特に中国は、装置の内製化に国を挙げて注力しており、地域別のシェアがわずか0.6%であるはずが無いと思う。従って、このまま日本のシェアがずるずる低下していった場合、「韓国や中国以下」になり下がる可能性も現実味を帯びてくる。

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