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半導体製造装置でも躍進する中国 日本はシェア低下を止められるのか湯之上隆のナノフォーカス(74)(5/5 ページ)

半導体製造の前工程において、日本の半導体製造装置メーカーのシェア低下が止まらない。代わって躍進しているのが中国メーカーである。今回は、半導体製造装置のシェアの推移を分析し、中国勢が成長する背景を探る。

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日本の前工程装置のシェアが下がる原因

 では、なぜ、日本の装置のシェアがこれほど低下するのであろうか?

 その原因分析を行った結果を図11に示す。13種類の各種装置について、2011年、それから10年後の2021年、さらに2022年と2023年における日本のシェアを見てみると、ほとんどの装置のシェアが低下しているのである。


図11 日本の前工程装置のシェア(2011年⇒2021〜2023年)[クリックで拡大] 出所:モルガンスタンレー証券のデータおよび筆者の調査を基に作成

 特に、シェアの低下が顕著なのは、露光装置、ドライエッチング装置、CVD装置、スパッタ装置、CMP装置、バッチ式洗浄装置、外観検査装置、測長SEMである。この中でも、露光装置、ドライエッチング装置、CVD装置、外観検査装置は、市場規模が100億米ドルを超える装置群であるため、そのシェアの低下は日本全体の凋落(ちょうらく)に大きく関係していると言える。

 一方、日本が大きくシェアを向上させているのは、マスク検査装置の1種類しかない。これは、Lasertec社が、最先端露光装置EUVに使うマスクを検査する装置で躍進し、それまでトップだった米KLAを抜き去ったことに起因している。しかし、マスク検査装置一種類だけが大きくシェアを向上させても、それだけでは他の装置のシェア低下を補うことができないのである。

前工程装置メーカーは自助努力で生き延びるしか道はない

 日本は現在、ラピダスやTSMC熊本工場など、半導体デバイスメーカーに約4兆円もの補助金を投入しようとしている。しかし、これらの政策が当初の目的を実現する可能性は限りなく小さいため、上記の補助金のほとんどは無駄ガネになってしまうだろう。

 そんなことよりも、直ちに各種前工程装置のシェア低下を止めるための対策を講じるべきである。もはや、今が、日本の前工程装置産業にとってのラストチャンスかもしれない……ということを、あっちで講演し、こっちで記事に書いても、日本の半導体政策にはまるで反映されない。

 となると、装置メーカー各社は、自助努力で生き延びるしか方策はない。それは困難な道かもしれないが、何もしないでいると、日本の半導体デバイス産業のように淘汰されてしまうだろう。これについて、筆者にできることは、各社にエールを送ることぐらいしかない。

 日本の前工程装置メーカー、ガンバレ!


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筆者プロフィール

湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。2023年4月には『半導体有事』(文春新書)を上梓。


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