3社統合で「ユニークなパワー製品」の開発に勢い ADI:Maximの買収から3年が経過(2/3 ページ)
Linear Technology、Maxim Integratedの買収を経て、Analog Devices(ADI)はパワー関連事業を加速させている。同社のMulti-Market Power Business Unitでコーポレートバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるJen Lloyd氏が、3社が統合したことで強みを増したパワー関連の主力製品を紹介した。
超低ノイズ、高集積 ユニークな製品群
Silent Switcherは、Linear Technologyが小型で高効率の電源を実現するために開発した技術だ。低いEMI放射と高速なスイッチングが特長で、2021年には最新となる第3世代の「Silent Switcher 3」の量産が始まった。前世代品に比べ、10Hz〜100kHzの低周波領域におけるノイズ性能を改善し、高速な過渡応答を実現している。Silent Switcher 3として「LT8622S」「LT8624S」などが2023年に発表され、日本ではLT8622Sのデモを同年3月にメディア向けに公開した。
μModuleもLinear Technologyの製品だ。アナログICと周辺回路を1パッケージ化したDC-DCレギュレーターで、産業やテレコムなどさまざまな分野で使われている。「ノイズが極めて小さく、データコンバーターやRFトランシーバーなどの電源に適している」(Lloyd氏)。μModuleの新製品である「LTM4683」は、同等のパッケージサイズの競合品に比べ出力電流が56%大きいことが特徴だ。
Lloyd氏は、μModuleの特徴をよく表している品種として「LTM4709」を挙げた。3A出力を3チャンネル備えたLTM4709は、パッケージ内部にLDO(低ドロップアウト)レギュレーターとキャパシター、抵抗が統合されている。外付け部品は入出力のセラミックコンデンサーのみというシンプルさで回路を設計できる。加えて、RMSノイズが1.3μVrms(10Hz〜100kHz)と極めて低く、PSRR(電源電圧変動除去比)は1MHzにおいて51dBと高い。RFシステム用電源や計測機器、医療機器など、超低ノイズが求められる用途に適しているとLloyd氏は述べる。
Maximの技術の一つは「nanoPower」レギュレーター技術だ。静止電流が非常に低く、バッテリー駆動製品の寿命を延ばすことができる。ヘルスケアやウェアラブル機器、IoT(モノのインターネット)機器などのアプリケーションに向けた製品になる。
先進的なコントローラー技術を具現化した新製品としては、昇降圧コントローラーIC「LTC7878」を挙げる。インダクターのDCR(直流抵抗)による電流検出機能を備えている点が特徴だ。「シャント抵抗などのディスクリートを使って電流検知機能を構成する場合に比べて、コストとエネルギー損失の両方を低減できる」(Lloyd氏)。その他、バッテリー充電回路のバックアップとしても使用できる双方向昇降圧コントローラーIC「LT8708」や、「パススルー(Pass-Thru)」機能を備えた昇降圧コントローラーIC「LT8210」などがある。パススルーとは、ユーザーが設定するウィンドウ内に入力電圧があれば、入力電圧がそのまま出力電圧となる機能。このパススルーモードで動作した場合、EMIとスイッチング損失がなくなり、最大99.9%と非常に高い効率を実現できる。
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