わずか4枚のミラーで構成 EUV露光技術を開発:消費電力は1/10、装置コストも削減
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の新竹積教授は、小型EUV(極端紫外線)光源で動作する「EUVリソグラフィー先端半導体製造技術」を開発した。この技術を用いると、消費電力を従来の10分の1以下にでき、装置コストも削減可能だという。
7nmノード以降の先端半導体製造に向け装置の国産化も視野に
沖縄科学技術大学院大学(OIST)の新竹積教授は2024年7月、小型EUV(極端紫外線)光源で動作する「EUVリソグラフィー先端半導体製造技術」を開発したと発表した。この技術を用いると、消費電力を従来の10分の1以下にでき、装置コストも削減可能だという。
AI(人工知能)サーバ用GPUやモバイル機器に向けた高機能LSI、大容量DRAMといった最先端半導体の製造工程には、EUVリソグラフィー装置が導入されている。しかし、「装置の電力消費が大きい」「価格が高い」といった課題もある。その大きな理由として、優れた光学特性を得るために構造が複雑となり、高出力のEUV光源を用いる必要があること、などが挙げられる。
そこで今回、2つの課題を解決した。1つ目はフォトマスクの画像をシリコンウエハーに転写するためのプロジェクター光学系を、2枚のミラーで構成した。もう1つは、平面ミラー(フォトマスク)上に形成されたロジックパターンに対し、光路を遮ることなくフォトマスクの前方からEUV光を照射できるようにしたことである。
EUVエネルギーはミラーで反射するごとに40%ずつ減衰するといわれている。一般的にEUV光源から出力された光は、10枚のミラーを通ってウエハーに到達する。このため、最終的にEUVエネルギーは1%程度まで減少する。一方で、高出力のEUV光を得ようとすれば、多くの電力と大量の冷却水が必要になるという。
そこで今回は、2枚の反射ミラーでプロジェクターを構成した。最低6枚の反射ミラーを用いていたこれまでの構成に比べ、極めて単純である。新竹教授は「光学の収差補正理論を慎重に見直すことで可能になった」と説明する。しかも、詳細な性能は光学シミュレーションソフトウェア「OpTaliX」を用いて検証済みだという。
今回の技術を応用すれば、EUV光がEUV光源からウエハーまで到達するのに用いるミラー数は4枚で済む。このためウエハーには10%以上のエネルギーが到達することから、出力が数十WのEUV光源でも十分動作するというわけだ。消費電力は100kW以下である。
今回は、「二重露光フィールド」と呼ぶ新方式の照明光学系も開発した。フォトマスク上に形成された回路パターンに対し、光路を遮ることなくフォトマスクの正面からEUV光を照射する方式で、マスク3D効果を最小限に抑えることができたという。
新型EUVリソグラフィーの開発は、7nmノード以降の先端半導体製造に貢献するとみられる。研究チームは引き続き、装置コストの低減などに取り組むとともに、装置の国産化も視野に入れている。
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