Qorvoが日本市場に本腰 車載や防衛分野を狙う:3年で売上高を倍に
Qorvo Japanは2024年7月31日、メディア向け事業説明会を実施した。Qorvo Japan ジャパンカントリーマネージャーを務める大久保喜司氏は、国内の事業戦略について「防衛分野や自動車分野に注力し、3年以内に売上高を倍にする」と語った。
米Qorvoの日本法人であるQorvo Japanは2024年7月31日、メディア向けの事業説明会を実施した。同社でジャパンカントリーマネージャーを務める大久保喜司氏は、国内での事業戦略について、自動車や防衛分野を軸に、今後3年以内に売上高の倍増を目指す方針を明らかにした。
Qorvoは、RFフロントエンドモジュールや無線通信IC、パワー半導体関連を中心に、年間80億台のデバイスを出荷している。2024年3月期(2023年4月〜2024年3月)の売上高は38億米ドルだ。売上高の約半分がスマートフォン向けで、特にPAMid(PA Module with integrated Duplexer)が主力製品だという。大久保氏は、「スマホにはPaMid以外にも、MEMSタッチセンサーやフォースセンサーなど、あらゆる技術が結集している。Qorvoの製品は、大手スマホメーカーにも採用されている」と説明した。
注力分野としては、「Connectivity」「Electrification」「AI/Datafication」「Mobility」を挙げ、中でも、急成長している分野として自動車を紹介した。大久保氏は「自動車の電動化に伴い、自動車を“大型のスマホ”と捉える見方もある。自動車が“スマホ化”するほど、スマホで培ったQorvoの強みが生きてくる」とコメントした。
大久保氏は、「日本は、Qorvoにとって重要性が増している市場だ」と続ける。「今後は自動車や防衛分野に注力し、3年以内に売上高を倍にする。既に2億米ドル規模のプロジェクトも動いていて、実現可能な目標だと考えている」(同氏)
日本の重要性が増している理由については「Qorvoの事業方針と日本市場の需要がマッチしてきている」と述べる。「防衛分野では、地政学リスクなども踏まえて日本政府が予算を付けているため、関連製品の開発が加速し、Qorvo製品の需要も増えている。自動車分野は、Qorvo Japanで一番売上高の大きい市場だ。コネクテッドカーの拡大とともに需要が増している。今後は、車載用Wi-Fiや、乗員検知/置き去り防止ソリューションに向けたUWB(超広帯域)無線通信技術などの需要増を見込んでいる」と語った。
なお、グローバルの方針について、大久保氏は、「チップの提供にとどまらず、リファレンスデザインや回路シミュレーターなども含めて、システムレベルの提案を目指している。製造面では、製品をいち早く市場に投入することを重視しているため、自社生産にこだわらず、ファウンドリーやOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)も積極的に活用する」と付け加えた。
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