国産AI SBC「Kakip(カキピー)」が24年10月に発売へ:ルネサスのAI MPU「RZ/V2H」搭載
ユリ電気商会は、ルネサス エレクトロニクスのビジョンAI向けMPU「RZ/V2H」を搭載したSBC「Kakip(カキピー)」を2024年10月7日に発売する。価格は5万9800円(税込み)。当面は8GB(ギガバイト)版のみ生産予定で、「2GB、4GB版はマーケットからの要望が多ければ対応可能」という。
ユリ電気商会は2024年8月30日、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)のビジョンAI(人工知能)向けMPU「RZ/V2H」を搭載したSBC(シングルボードコンピュータ)「Kakip(カキピー)」を同年10月7日に発売すると発表した。価格は5万9800円(税込み)で、マルツオンライン、秋月電子通商などの通販サイトおよびAmazonでの販売を予定している。なお、当面は8GB(ギガバイト)版のみ生産予定で、「2GB、4GB版はマーケットからの要望が多ければ対応可能」と説明している。
高いAI処理および低消費電力性能の「RZ/V2H」搭載
RZ/V2Hは、ルネサスが2024年2月に発表した、ビジョンAI向けMPU「RZ/Vシリーズ」の新製品。同社の最新世代AIアクセラレーター「DRP-AI3」を搭載し、電力性能10TOPS/Wおよび、ファンレスで最大80TOPSのAI性能を実現したもの。また、アプリケーション処理を担うLinux用に最大動作周波数が1.8GHzのArm Cortex-A55を4コア、リアルタイム処理を担うRTOS用には同800MHzのCortex-R8を2コア、サブCPUとしてCortex-M33を1コア搭載していて、これらCPUとDRP-AI3との組み合わせによってロボティクス制御に必要なビジョンAIと高速リアルタイム制御を1チップで実現できるという。
Kakipは、RZ/V2Hに合わせてユリ電気商会が発表した、RZ/V2H搭載SBDだ。製品開発に向けたハードルを下げるべくRaspberri Pi(ラズパイ)のフォームファクターを踏襲している他、USBやEthernet、GPIOといった標準的インタフェースはもちろん、PCIeエンドポイントやモーターなどの外部制御用のCAN-FDの搭載、さらに4チャンネルのMIPI-CSI2(×4レーン)から複数カメラの映像入力が可能となっている点などを特長としている。
Kakipの用途としてはAMR/HSRなどの小型自律型ロボットやドローン、CCTV(閉回路テレビ)や生産設備のビジョンセンサー、ホビーロボットおよび、大学や高専などの学術研究を想定し、年間3000台の生産を目標としている。Kakipの企画製造と開発設計にはAMATAMAおよびJ-7 SYSTEM WORKSが携わっている。
なお、OSについては当初、組み込み用途でよく使われるYocto LinuxをメインOSとして開発を進めていたというが、「実験やPOCの用途では使い勝手の良いUbuntuを望む声が非常に多かった」ことから、Ubuntu 24.04LTSの対応を決定したとしている。
2024年2月の発表当時は同年4月末の発売予定としていたが、半年遅れでの発売となる。また当時はKaki Pi(カキパイ)という名前だったが、2024年3月15日、「たとえ法的な制約がなくとも、名称により他社製品との混同が生じたり、将来的な販売店での取り扱いや企業ユーザーでのご採用に影響を与えたりする可能性があると判断した」ことからKakipに名称変更したことを発表していた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- エッジAIをガンガン処理できる! 「熱くならないプロセッサ」をルネサスが開発
ルネサス エレクトロニクスは、AI(人工知能)アクセラレーター技術「DRP-AI」の最新世代などを開発。同技術を搭載したビジョンAI用プロセッサ「RZ/V2H」を発表した。高い電力効率を高速な推論処理を両立できることが特徴だという。 - 国産AI SBC「Kaki Pi(カキパイ)」の名前が「Kakip(カキピー)」になってた件
美味しそうな名前、ということに変わりはありません。 - 日本にRaspberry Pi 5専用ライン新設も、ソニーとラズパイの「長い蜜月」
Raspberry Piとソニーの長く深い関係。 - ラズパイ4は「産業用で魅力的」、広がる活用事例
シングルボードコンピュータなどの販売を手掛けるTechShareは2019年10月30日、日本Raspberry Piユーザグループとともに、「Raspberry Pi(以下、ラズパイ)」の産業利用に関する情報を共有するイベント「Raspberry Pi Industry User Conference 2019」を都内で開催した。【訂正あり】 - Raspberry Pi搭載CPUの変遷にみた「上手なチップ開発術」
今回は、シングル・ボード・コンピュータの代表格である「Raspberry Pi」に搭載される歴代のCPUチップを詳しく観察していこう。現在、第3世代品が登場しているRaspberry Piは、世代を追うごとに、CPUの動作周波数が上がり、性能がアップしてきた。しかし、チップを観察すると、世代をまたがって同じシリコンが使われていた――。 - エッジデバイスの設計を支援する製品やデモを披露、アヴネット
エレクトロニクス商社のアヴネットは「EdgeTech+ 2023」に初出展する。「Edgeデバイスのスマートな開発設計をサポート」というテーマのもと、AMDやNXP Semiconductors、onsemi、ローム、STMicroelectronicsといった主要サプライヤーの製品ポートフォリオや事例を含むソリューションを展示する。