初の車載SiCモジュールで市場展開を加速、三菱電機:PCIM Europe 2024(2/2 ページ)
三菱電機は、ドイツ・ニュルンベルクで開催された世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2024」において、モールドタイプのxEV用インバーター用パワー半導体モジュール「J3」シリーズや、鉄道および直流送電などの大型産業機器向けのSBD内蔵SiC MOSFETモジュールなど、各分野向けに開発した新製品を紹介していた。
「唯一の課題」を解決した、新SBD内蔵SiC-MOSFET
鉄道および直流送電などの大型産業機器向けではSBD(ショットキーバリアダイオード)内蔵のSiC-MOSFETモジュールを展示していた。
同社は2016年にはSBD内蔵のSiC-MOSFETの耐圧6.5kV品を発表していて、耐圧3.3kVのSBD内蔵SiC-MOSFETモジュールも既に長く展開している。SBD内蔵品は、別にチップを組み合わせて実装する場合に比べ、パワーモジュールの小型化や大容量化が容易で、スイッチング損失も低減できる。一方で、接続した回路でサージ電流が発生すると、チップが熱破壊する可能性があるという課題があったという。
そこで同社は、パワーモジュール内で並列接続されたチップ構造において、サージ電流が特定チップに集中するメカニズムを解明。特定チップに対するサージ電流の集中を防ぐための、新たなチップ構造を開発したという。サージ電流耐量は従来の5倍と、Siパワーモジュールとほぼ同等のサージ電流耐量が得られるという。説明担当者は、「チップサイズの小型化やインダクタンス低下など良いことづくめだが、唯一の課題だったサージ電流耐量について対応ができ、実用性が上がった」と語っていた。
2024年3月には耐圧/定格電流「3.3kV/800Aタイプ」を発売していたが、今回、PCIM Europe 2024の開催前日である2024年6月10日に、耐圧/定格電流「3.3kV/400Aタイプ」と「3.3kV/200Aタイプ」の低電流領域の2製品を新たに発売「鉄道車両の補助電源装置や比較的小容量の駆動システムへの採用が可能になり、電力変換効率の向上のため多様な出力容量が求められる大型産業機器向けインバーターへの対応領域が拡大する」としている。
この他、ブースでは三菱電機のxEV用パワー半導体モジュール「J1」シリーズを搭載した製品として、Harley Davidsonの電動バイク関連会社「Livewire」が販売する電動バイク「S2 Del Mar」の実車を展示していた。
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