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インタビュー

「まねできない技術」で製品を高付加価値化 太陽誘電社長が語る成長戦略厳しい状況で就任も(2/3 ページ)

太陽誘電の新社長に佐瀬克也氏が就任して1年3カ月が経過した。「厳しい状況での社長就任だった」と語る佐瀬氏だが、中期経営計画の目標達成に向け「適切なタイミングでアクセルを踏むことができれば業績改善につなげられる」と強調する。同氏に、中期経営計画の進捗や製品戦略、太陽誘電の強みや課題を聞いた。

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あらゆる製品で高付加価値化を図る

――製品戦略についてお聞かせください。

佐瀬氏 当社の主力であるMLCC(積層セラミックコンデンサー)事業のさらなる成長に加え、インダクターと通信デバイスを強化してコア事業として確立する。これらの製品群で高付加価値化を加速する。

 AIサーバでは、330μFや200μFなど極めて容量が大きいMLCCを多用する。この容量を実現するには、非常に薄い誘電体層を800〜900層、高精度に積層する技術が不可欠になる。積層した後に信頼性を確保する技術や、誘電体材料を開発する技術なども必要だ。これらを全て実現できるメーカーは限られているので、「容量が大きい」ことは十分に高付加価値になる。

 スマートフォンでは、AIサーバとは対照的に、小型化と容量の確保をいかに両立できるかが付加価値になる。当社はスマホのPA(パワーアンプ)向けに0.25×0.125mm(0201サイズ)のMLCCを提供していて、このような超小型のMLCCではきれいにカットする技術が必要になる。

 MLCCの誘電体材料はセラミックスがメインで、材料も製造プロセスも全て自前だ。汎用の装置や設備を使用すると、積層数や精度などでどうしても制約が出てしまう。資金を投入すれば実現できるものではなく、完全にノウハウが物を言う世界だ。それ故、海外メーカーはなかなか手が出せない。そこは、半導体業界とは少し異なる点ではないか。


MLCCの製品戦略[クリックで拡大] 出所:太陽誘電

――インダクター事業についてはいかがでしょうか。

佐瀬氏 積層インダクターでは、材料を従来のフェライトからメタルにシフトしていく。メタルは大電流を扱えて、インダクタンスが急激に低下しにくいという特長を持つ。電子機器の電力損失を削減して効率を高め、電池寿命を伸ばすことができる。まずはスマホやスマートウォッチ、イヤフォンなど、充電容量が小さな機器向けに訴求し、いずれは大型アプリケーションも狙う。

 巻線インダクターも、同様にフェライトからメタルに移行させていく。PCメモリではDDR5への移行が始まっていて、これがけん引役になるだろう。DDR5ではPMIC(電源管理IC)がモジュールに搭載される。そこにインダクターも入るので、需要増を見込んでいる。DDR5への移行はわれわれの予想よりも少し遅かったが、長期間にわたり使われる規格だと想定しているので、メタル巻線インダクターのビジネス機会が増えるだろう。PCだけでなく、自動車、産業機器などにも用途を拡大していく。

 特に中国には、安価なフェライトインダクターを手掛けるメーカーが多数ひしめいている。そうしたメーカーとは勝負せず、新しいメタル材料を用いるインダクターにシフトしていく方針だ。


インダクターの製品戦略[クリックで拡大] 出所:太陽誘電

――通信用デバイスや導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサーも展開しています。

佐瀬氏 通信用デバイス事業では、中国スマホメーカー向けにディスクリートを提供するビジネスが売上高のほとんどを占めている。2023年は中国スマホ市場が盛り返してきたが、厳しい状況が続いている。

 広い帯域幅に対応する「TLSAW(Trapped Leaky Surface Acoustic Wave)」デバイスや、パッケージ技術「HPDP(High Power Durable Package)」など、独自の技術で差別化したハイエンド品でビジネス拡大を狙う。新製品の投入で中国メーカーと差異化を図りたいが、苦戦しているのが実情だ。

 導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサーは、車載向けの需要拡大に対応する。車載向けの需要は2023年から2030年にかけて3.3倍になると予想されている。当社も、開発から生産まで国内一貫体制を構築し、しっかりと投資をしながら売り上げを伸ばしていく。この分野は、2019年1月に完全子会社化したエルナーの事業で、将来性のある有望な柱に育っている。

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