「まねできない技術」で製品を高付加価値化 太陽誘電社長が語る成長戦略:厳しい状況で就任も(3/3 ページ)
太陽誘電の新社長に佐瀬克也氏が就任して1年3カ月が経過した。「厳しい状況での社長就任だった」と語る佐瀬氏だが、中期経営計画の目標達成に向け「適切なタイミングでアクセルを踏むことができれば業績改善につなげられる」と強調する。同氏に、中期経営計画の進捗や製品戦略、太陽誘電の強みや課題を聞いた。
MLCCに継続投資 インドにも注目
――今回の中計では5年間で3000億円の投資を計画しています。今年度の投資計画をお聞かせください。
佐瀬氏 2024年度は700億円を予定している。120億円が建物で、残りは設備関連への投資だ。投資の中心はMLCCとインダクター、導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサーになる。MLCCでは年間10〜15%の生産能力増強を継続しており、今回の投資もそれに充てる。2023年に完成し、量産を開始した中国とマレーシアのMLCC工場で、装置や設備を順次増強していく。
――太陽誘電は海外売上高比率が約9割に上ります。グローバルでの競争環境についてはいかがでしょうか。
佐瀬氏 実は、それほど強いプレッシャーを感じたことはない。中国では、インダクター、コンデンサーのローカルメーカーは多数存在するが、先端分野を狙うわれわれとはぶつからない。そのため、価格に対するプレッシャーもそれほどない。
――次の成長市場として注目している国や地域はありますか。
佐瀬氏 まずはインドが挙げられる。ここは市場の勢いがすさまじい。中国に進出していた顧客がインドもターゲットに定めるケースも増えているので、新興市場でも顧客をサポートできる体制を整えている。中国の市場規模は無視できないほどのボリュームがあるが、当社は20年以上前から中国以外にも目を向け、地域的なバランスを考慮しながら事業を展開してきた。
加えて、日本、中国、韓国、マレーシアに拠点を持っているので、どこからでも出荷できるのは当社の利点だろう。パンデミックや地政学リスクなど、社会情勢や国際情勢の変化による影響を最小限に抑えるために、今期の中期経営計画では、生産能力の分散を特に意識して進めている。
「想定以上の」有事への対応力を鍛える
――2023年6月29日に社長に就任して1年以上が経過しました。太陽誘電の強みや課題を、あらためてお聞かせください。
佐瀬氏 業績が踊り場に差し掛かった厳しい状況での就任というのが正直なところだった。ただ、苦しい中でも生産能力増強に向けた投資は継続し、製品力も着実についている。市況を的確に捉え、適切なタイミングでアクセルを踏むことができれば、業績改善につなげられると確信している。
課題として挙げたいのが、有事の際の対応力だ。コロナ禍の対応が、コンデンサーメーカーとして最も速かったかと問われれば疑問が残る。各事業における最大のリスクを抽出し、対応のシミュレーションを重ねて常に準備をしておくことが重要だと痛感した。パンデミックやウクライナ侵攻など、昨今は“想定以上の有事”が発生している。あらゆる有事への対応力を鍛え、顧客に不安や懸念を与えることなく、そしてわれわれも機会を損失することなく、事業を継続できる体制を整えていく。
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