「電流を流すだけで積和演算」 TDKの超省電力AI用デバイス:消費電力はGPU比で100分の1(2/2 ページ)
TDKは、スピントロニクス技術を活用するニューロモーフィック素子として「スピンメモリスタ」を開発した。AIで多用される積和演算を、GPUに比べて100分の1の消費電力で実行できるという。フランスCEAと東北大学との協業により、2030年の量産技術の確立を目指す。TDKは、スピンメモリスタのデモを「CEATEC 2024」で公開する予定だ。
スピンメモリスタの実素子を用いたデモをCEATECで披露
TDKは2020年からフランスの研究機関CEAと協業し、スピンメモリスタを用いたAIデバイスの開発を進めている。この協業によりTDKは、スピンメモリスタを搭載したAI回路で音声分離を行うコンセプトデモを完成させ、CEATEC 2024で披露する。
デモでは、クラシック音楽とスピーチ、雑音の3種類の音を未知の比率で混合する。AI回路は3種類の音をリアルタイムで学習しながら聞き分け、分離していく。雑音が大きくなるなど混合する比率が変わっても、リアルタイムで学習し直して分離を継続する。一般的なAI(機械学習)で同様の音声分離を行う場合、音を事前に学習する必要があるため、混合する比率が変わるとそれに対応することは難しい。
2030年にも量産技術の確立へ
TDKは今後、スピントロニクス研究に強い東北大学も加えた3者連携により、12インチウエハーでスピンメモリスタアレイと回路を試作し、チップレベルでの性能検証を進める。2027年までの実用化と、2030年までの量産技術確立を目指す。「集積する際の課題として歩留まりが挙げられる。歩留まりを向上させつつ、いかに集積を拡大していくかが鍵になる」(TDK)
スピンメモリスタ自体の性能改善も進める。TDKは「材料レベルからの開発が欠かせない。具体的には、スピンメモリスタの磁壁をゆっくりと安定して動かせるような材料が必要になる」と語った。
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