「iPhone 16」を分解 Appleの細やかな半導体設計:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(86)(1/3 ページ)
2024年9月に発売されたApple「iPhone 16」「iPhone 16 Pro」を分解した。前世代の「iPhone 15」シリーズに比べて、内部構造なども大きく変化している。分解結果からは、Appleが同じiPhone 16シリーズでも、主要コンポーネントを一つ一つ最適化していることが伺えた。
多くの進化を遂げた「iPhone 16」シリーズ
Appleは例年通り、9月に多数の新製品を発表し、販売を開始した。10周年モデルとなる「Apple Watch Series 10」、第4世代となる「AirPods 4」(アクティブノイズキャンセル機能の有無で2機種)、USB-C端子に変更されたヘッドフォン「AirPods Max」、そして4機種の「iPhone 16」が発売された。弊社では発売当日の9月20日に上記全機種を入手し、AirPods Max以外は既に分解解析を終了し、弊社の定期刊行「テカナリエレポート」の発行を終わらせている。
図1は発売されたばかりの「iPhone 16 Pro」の様子である。2023年モデルの「iPhone 15 Pro」に比べてディスプレイサイズが6.1インチから6.3インチに、一回り大きくなったので本体サイズも若干増えている(厚さは同じ)。機能としてはプロセッサが「A17 Pro」から「A18 Pro」に置き換わり、Wi-Fi通信もWi-Fi 6EからWi-Fi 7に、Ultrawideのカメラが12MPから48MPに進化した。また望遠カメラは、2023年のiPhone 15 Proの望遠カメラは光学ズームが3倍であったが、「iPhone 15 Pro Max」に採用された5倍光学ズームが、ほぼそのままの形状で2024年のiPhone 16 Proに移植され5倍ズームが可能となっている。他にもカメラボタンが設置され、25Wのワイヤレス充電に対応したことなど、前モデルに比べて多くの進化を実現している。
内部構造も大きく変化
図2はiPhone 16 Proの内部の様子である(右端)。内部構造が大きく変わったので、2023年モデルのソニ「Xperia 1 V」、iPhone 15 Pro、2024年のソニー「Xperia 1 VI」とiPhone 16 Proを図2に掲載した。iPhoneの分解手順は、ディスプレイを取り外して内部という構造。一方、ソニーのXperiaや中国のXiaomi、VIVO、OPPO、Huawei、韓国Samsung Electronicsの「Galaxy」シリーズ、Googleの「Pixel」シリーズなどいずれも、ソニーのXperiaと同じ、カメラレンズがある側の背面カバーを取り外して内部という構造である。
iPhone 16 Proは従来のディスプレイを外して内部という構造ではなく、Xperiaなどと同じ背面カバーを取り外すという構造に変化している。電池交換の手順が、一般的なスマートフォンとiPhoneで共通化されるためという理由もありそうだ。ただし、多くのスマートフォンが矩形の電池を用いているのに対し、iPhoneでは2017年の「iPhone X」からL字型の電池が搭載されている。L字電池という大きな特徴はそのまま iPhone 16 Proにも引き継がれている(ただし完全金属カバーに覆われたものになっている)。
図3に、歴代iPhoneの内部構造(コンポーネントの配置や左右向き)の変化を示す。2007年の初代「iPhone 2G」から2011年の「iPhone 4S」まで、分解手順は背面カバー取り外しであった。現在の一般的なスマートフォンと同じ構造が iPhone 4Sまで採用されている。しかし2012年のiPhone 5でディスプレイを取り外す構造に変わっている(実際には内部フレームの配置位置が変わっている)。以降のiPhoneは2023年のiPhone 15シリーズまで一貫して、ディスプレイ直下に電池、基板、カメラなど内部コンポーネントが配置されてきた。iPhone 16シリーズの最大の変化は、内部の基本構造が他社のスマートフォンと共通化されたこと。つまり、Appleとしては実に2011年以来の構造変更を行っている点である(ただし修理関係者以外にはあまり知られない変化)。なお、2019年の「iPhone 11」シリーズと2020年の「iPhone 12」シリーズでは内部の左右が入れ替わっている。
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