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AI活用でサプライチェーン管理はどう変わるのかリアルタイムで影響を予測(2/2 ページ)

不透明な国際情勢や大規模な自然災害など、サプライチェーンがさまざまなリスクにさらされる中、AI(人工知能)を活用して、影響を詳細かつ正確に予測しようとする動きが出ている。

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有事の際の柔軟性とレジリエンスが重要に

 サプライチェーンは現在、かつてないほどのプレッシャーにさらされている。米国で最近発生した大型ハリケーン「Helene」のような猛烈な暴風雨や、突然の規制変更、港湾ストライキ、消費者需要の変化などにより、レガシーシステムでは対応不能なレベルの敏しょう性が求められている。それに代わってAI駆動型プラットフォームは、サプライチェーンのニーズを予測し、需要の変動やボトルネック、サプライヤーの課題などを、数秒以内に特定することができる。サプライチェーン管理者たちは、問題が深刻になる前に、出荷のルート変更から在庫レベルの調整に至るまで、知識に基づいた判断を即座に下すことができるのだ。

 AIの最も重要なメリットの一つに、柔軟性とレジリエンスを維持し、これまで不可能だった正確さでリアルタイム状況に適応することができるという点がある。そしてもう1つ、「確率論的なサプライチェーン計画」と呼ばれる、シナリオプランニングを強化する能力もある。今やサプライチェーン管理者たちは、AIを使って、需要の変化やサプライチェーンの混乱などに基づいた潜在的なシナリオをシミュレーションできるようになった。例えば、「次の四半期に需要が20%急増したらどうなるのか」「サプライヤーの信頼性が10%低下した場合、在庫レベルにどのような影響が及ぶのか」といった重要な問題について、数分以内にその答えを得ることができる。

 もちろん、全てのAIプラットフォームが役割を果たせるというわけではない。予測分析に関しては多くの議論がなされているが、実際には処方的分析(Prescriptive Analytics)の方向に進んでおり、本物の価値を提供できるレベルには達していないシステムを採用する企業も多い。そのようなツールは、ほとんど実益をもたらさない可能性がある。企業がサプライチェーンを真に最適化するためには、実用的な洞察を提供できるAIソリューションが必要になる。

 サプライチェーン業界におけるAIの活用は、完全に自律的な計画を提供できるソリューションを開発できるかどうかにかかっているだろう。こうしたソリューションでは、人間の介入は最小限に抑えられ、システム自体が需要予測から実行まで全て行う。

 敏しょう性と効率が重要視される時代において、AIは既にサプライチェーンを変えつつある。こうした技術を導入し、活用できる企業だけが、急速に変化する世界で先頭に立つことができるのだ。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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