AI半導体の複雑化でテスト手法に新たな課題:ATE業界はどう対応するのか(3/3 ページ)
AI(人工知能)の普及が加速する中、AI用半導体はさらなる高性能化を求められている。これに伴い、変革を迫られているのがATE(自動テスト装置)分野だ。
柔軟で包括的なテスト戦略が必要に
AIアプリケーションは既にテスト市場に大きな影響を与えているが、ATE業界は、今後数年間にわたって展開される成長トレンドのごく初期段階にある。AIは変革をもたらす長期的な成長の原動力であり、業界では、ADAS(先進運転支援システム)などのエッジAIアプリケーションだけでなく、ネットワークにつながったAIアプリケーション全体への影響が見られる。
今後、半導体テスト市場におけるコンピューティング市場の規模は、従来の予想よりも速いペースで成長し、2024年にはTAM(Total Addressable Market)が16億米ドルになると予想されている。
現在、AIによって成長がもたらされている分野は、クラウドAI機能の構築、特に膨大なデータセットに対するLLM(大規模言語モデル)のトレーニングに集中している。LLMが現実世界の問題解決に使用されると、ビジネスにも影響をもたらす。これは、クラウドとエッジの両方の推論アプリケーションで行われる。半導体テストはこの影響の中心にあり、デジタルシステムやデバイスの品質と信頼性を保証するために、ツールやデータの活用や、共同研究を進めている。
LLMのトレーニングに求められるハードウェア要件は膨大で、具体的には、汎用的できめ細かなコンピューティング、HBM、高密度のネットワーク相互接続、膨大な電力などが必要である。その全てに、品質と信頼性を保証するための革新的なテスト戦略が必要となる。
AI時代は、高度なパッケージングにおける異種統合の新たな機会をもたらした。先進ノードや新しい相互接続規格などの新たな技術と組み合わせることで、これらの開発は、EDAから製造までのプロセスと最適化の取り組みに指数関数的な圧力をかける形となっている。
こうしたトレンドから発生するさまざまな課題に対処するためには、革新的なテスト戦略と先進的な装置、さらに今日の高度な半導体の信頼性と性能を確認するためのハードウェアとソフトウェア両方の統合に重点を置くことが必要である。歩留まり、テストコスト、品質を最適化するには、柔軟で包括的な半導体テスト戦略が不可欠だ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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