波長を変換しながら3000kmの長距離伝送、NTTとNEC:IOWNサービスの提供エリア拡大へ
NTTとNECは、波長を変換しながら長距離光伝送を可能にする技術を確立した。開発した技術を活用すれば、「IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の適用エリアを拡大できるという。
4回の波長変換で3000km以上の伝送性能を確保
NTTとNECは2024年11月、波長を変換しながら長距離光伝送を可能にする技術を確立したと発表した。開発した技術を活用すれば、「IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の適用エリアを拡大できるという。
IOWN構想では、APNを用い大容量で低遅延のエンドツーエンド光パスを、少ない電力消費で広範囲に提供していくことを目指している。これによって、工場DXやインタラクティブなライブ映像配信サービス、遠隔手術などが可能となる。これを実現するには、割り当てられた波長が異なる光パスをつないでいく必要があるという。
これまでNTTは、APNを構成する光ノードシステム「Photonic Exchange」を研究してきた。長距離のエンドツーエンド光パスを効率的に提供するには、波長アダプター機能と伝送性能の確保を両立させる必要があるという。Photonic Exchangeは、クロスコネクト機能やネットワークに光パスを出し入れする機能に加え、波長アダプター機能も備えている。
一方、NECは「光−電気アナログ−光(OAO)型波長変換技術」を開発してきた。OAO型波長変換器は、光信号を電気デジタル信号に変えることなく波長を変換できる。このため、デジタル信号処理で生じていた「遅延」や「揺らぎ」をなくすことができるという。
そこで今回、Photonic ExchangeにOAO型波長変換技術を活用し、波長アダプター機能の実験実証を行った。具体的には、OAO型波長変換器のプロトタイプを用い、1周回当たり2個のOAO型波長変換器を含む周回伝送実験系を構築し、複数回の波長変換を行いながら100Gbps/λの光信号品質を測定した。
この結果、4回の波長変換を行っても3000km以上の伝送性能を確保できることが分かった。これは本州を縦断できる距離に相当するという。しかも、これまでの波長変換方式に比べ、波長変換で生じる消費電力を約90%削減し、遅延量は約99%も削減できることを確認した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 無線FE、300GHz帯で160Gbpsのデータ伝送に成功
NTTは、300GHz帯の半導体回路を用いた小型無線フロントエンド(FE)を開発し、160Gビット/秒のデータ伝送に成功した。6G(第6世代移動通信)で超高速通信を実現するための重要なデバイスとなる。 - 100Tbps超の伝送容量で800kmの光増幅中継伝送に成功
NTTは2024年9月3日、既存のファイバー上で集中光増幅器のみを用いて、毎秒100テラビット(100Tbps)を超える伝送容量で800km以上の長距離光増幅中継伝送に「世界で初めて」(同社)成功したと発表した。新たに開発した超長波長帯一括変換技術を用いて実現したものだ。 - 超短グラフェンプラズモン波束を電気的に発生、制御
NTTは、東京大学や物質・材料研究機構(NIMS)と共同で、パルス幅が1.2ピコ秒と極めて短いグラフェンプラズモン波束を電気的に発生させ、伝搬制御することに成功した。これを利用して、テラヘルツ(THz)電気信号の位相や振幅が変調できることを実証した。 - トポロジーの原理を活用したGHz超音波回路を開発
NTTと岡山大学は、トポロジーの原理を利用した「ギガヘルツ(GHz)超音波回路」を開発した。スマートフォンなどの無線通信端末に用いる高周波フィルターの小型化や高性能化が可能になるという。 - 映像認識×生成AIでスポーツ速報を自動生成、NEC
NECは「CEATEC 2024」に出展し、映像認識と生成AI(人工知能)を組み合わせた業務効率化ソリューションを紹介した。長時間の映像データから短い動画や説明文を自動生成する。 - 「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」を開発
東北大学とアイシンは、エッジ機器に適した大容量MRAM搭載の「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」を開発した。システム動作シミュレーションで検証したところ、従来に比べ電力効率は10倍以上、起動時間は10分の1以下となった。