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工場やクルマからの排熱を回収して再利用 新たな蓄熱材:低温排熱を高密度で蓄える
三菱電機と東京科学大学は、水を主成分とする感温性高分子ゲルを利用した「蓄熱材」を開発した。この蓄熱材を活用すれば、工場や自動車、住環境などから放出される30〜60℃の低温排熱を有効に回収し、再利用できる。
60℃以下の低い蓄熱温度で562kJ/Lという蓄熱密度を実現
三菱電機と東京科学大学物質理工学院材料系の早川晃鏡教授らは2024年11月14日、水を主成分とする感温性高分子ゲルを利用した「蓄熱材」を開発したと発表した。この蓄熱材を活用すれば、工場や自動車、住環境などから放出される30〜60℃の低温排熱を有効に回収し、再利用できる。
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、大気中に放出される排熱を有効に活用していくための研究が進んでいる。80℃以下の低温排熱を高密度に蓄えられる安価な蓄熱材料の開発もその1つである。
今回は、三菱電機が保有する「分子シミュレーション技術」や「蓄熱材構造の解析・評価技術」と、東京科学大学が保有する「階層構造ポリマー合成技術」や「蓄熱材の合成技術」を持ち寄り、低温排熱を高密度で蓄えられる蓄熱材料の開発に取り組んだ。
新たに開発した蓄熱材料には、水を主成分とした感温性高分子ゲルを利用した。温めると高分子混雑環境を形成するため、熱を貯める容量が大きくなり、低温の熱を高密度に蓄えられることを実証した。
実験では、感温性高分子ゲルを合成しその特性を評価した。この結果、60℃以下の低い蓄熱温度で、562kJ/Lという蓄熱密度を実現した。この値は、従来の市販品に比べ2倍以上だという。東京科学大学が開発した合成反応制御技術を用いることで、大量に合成しても実験と同等レベルの蓄熱密度が得られることも確認した。
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