ロームが車載SiCの主戦場で加速、新モジュール採用品を初公開:electronica 2024
ロームはxEV(電動車)用トラクションインバーター向けの市場展開を着実に進めている。「electronica 2024」では、同社の新しいモールドタイプSiCモジュールを採用した、フランスの自動車部品大手Valeoのインバーターを初公開した。
ロームは「車載向けSiCの主戦場」である、xEV(電動車)用トラクションインバーター向けの市場展開を着実に進めている。欧州最大規模のエレクトロニクス展示会「electronica 2024」(2024年11月12〜15日)では、同年6月に発表した独自モールドタイプSiC(炭化ケイ素)モジュールを採用した、フランスの自動車部品大手Valeoのインバーターを初公開。Valeoは2026年に量産開始予定で、欧州の自動車メーカーの車両に搭載されるという。また、会場では開発中の新たなSiCモジュールも初展示するなど、市場でのシェア拡大に向けた取り組みを強調していた。
トラクションインバーターは、xEVにおける各アプリケーションの市場の大半を占める「車載SiCの主戦場」だ。ロームは2024年6月に、このトラクションインバーター向けで、2in1仕様のモールドタイプSiCパワーモジュール「TRCDRIVE pack」を発表。同製品は、高い電力密度や独自の端子配置といった特長を備え(詳細は下記リンク)、トラクションインバーターに要求される小型化、高効率化、工数削減といった主要な課題に対応できるといい、ロームは「TRCDRIVE packのデファクト化を目指す」と意気込んでいる。
足元でEV市況減速も、パワートレインは大きく成長見込む
なお、ロームは2024年11月、2024年度の通期業績予想を下方修正。SiC事業の売上高目標についても従来の「2025年度に売上高1100億円」から、達成時期を2026〜2027年度へと後ろ倒しにしたことを発表している。これは産機関係およびEV市況の減速といった状況を背景としたものだが、一方で、「BEVの需要は足元で鈍化しているが、将来のBEV予測台数の変化率は小さい。BEVインバーターのSiC化率の伸長も引き続き中長期的に期待できる」といった見方も示していた。
SiC事業の売上高は、目標を後ろ倒しにはしたものの、2024年度も前年度比5〜10%増、25年度は前年度の2倍程度の成長を予想。特に「パワートレインに限定すれば24年度も2倍近く成長する見通しで、25年度も同等の伸びが期待できる」とも強調するなど、同事業での成長の継続および、パワートレイン向けの拡大についての期待を見せていた。
ロームは2024年5月に開催した決算説明会において、同モジュールについて既に3社でデザインウィンを獲得していることを明かしていて、今回のValeoは、そのうちの1社だという。electronica 2024の会場ではTRCDRIVE packを3つ搭載したインバーターの開発品を初展示していた。ロームは2024年11月26日に、Valeoとの共同開発について発表。Valeoは2026年初頭に、協業における最初のシリーズを供給開始予定としていて、欧州の自動車メーカーの車両に搭載されるという。ロームは、「Valeoが持つコンポーネント技術や筐体加工技術、熱制御技術とロームのパワーモジュールを組み合わせることで、シナジー効果を生み出す。Valeoとロームは、車載パワーエレクトロニクスにおける協業を通じて、トラクションインバータの性能と効率を向上させる」などと述べている。
STPAKと同形状の新モジュールも
ロームはこの他、会場においてSTMicroelectronicsのSiCパワーモジュール「STPAK」と同様の形状を採用した新開発のSiCパワーモジュール「BSTB」なども初展示。さらなる顧客拡大に向けた同社の取り組みを強調していた。
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