2024年は「エッジAIデバイス元年」 主要AI PCを分解:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(87)(3/3 ページ)
さまざまなモバイル機器で、AI(人工知能)機能は既に必須になりつつある。特に2024年はAI PCが相次いで市場に投入され、「エッジデバイスAI元年」とも呼べるほどである。今回は、2024年後半に発売された主要AI PCやプロセッサを取り上げよう。
Intel「CORE Ultra」を搭載したASUSのAI PC
図5は2024年10月発売のASUSのCopilot+ PC「Zenbook S 14」(UX5406)の様子である。搭載されるプロセッサはIntelの「CORE Ultra」第2弾となる200V Luner Lake(開発コードネーム)だ。2024年1月発売のCORE Ultra第1弾のMeteor Lake(開発コードネーム)はNPU性能が36TOPS。わずかにCopilot+ PCの要件に足りていなかった。第2弾のLuner LakeはNPU性能が48TOPSに上がり、Copilot+ PC対応となっている。
表3はCORE Ultra第1弾 Meteor Lake(上段)と第2弾 Luner Lake(下段)を搭載したPCのチップ構成である。Luner Lakeはパッケージ内にDRAMを搭載することで面積最小と距離最短を実現した。Appleが2020年の「M1」から行っている手法である(正式には2018年の「A12X」からApple採用)。組み合わせている電源ICは、Meteor Lakeでは米Alpha & Omega社、Luner Lakeが日本のルネサス エレクトロニクス(4チップ)となっている。
表4はCORE Ultra第1弾Meteor Lakeと第2弾Luner Lakeのシリコンの様子である。ともにチップレットで構成されている。Meteor Lakeはシリコンインターポーザ―(各シリコンを接続し電源供給を行う)まで入れて5シリコン、Luner Lakeは4シリコンの組み合わせとなっている。Meteor LakeではINTEL 4と呼ばれるIntel 7nmで製造されるCPUと、TSMC製造のGPU、NPU(SOC)が組み合わされていたが、Luner LakeではCPU、GPU、NPUはTSMC 3nm製造になっている。Intelはほぼ同時期にTSMC 3nm製造を含む、デスクトップPC向けプロセッサ Arrow Lakeの発売も開始しており、こちらもチップレット構成となっている。2024年後半に出そろったCopilot+ PC対応プロセッサだが、組み合わされる電源ICからシリコンの作り込みまで各社各様だ。
2025年にはCopilot+ PC分野にMediaTek-NVIDIA連合も参入する。またQualcomm、AMD、Intelも次世代プロセッサを発売する予定だ。スマートフォンも合わせ引き続き観察し報告していく。
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