半導体業界ゆく年くる年 24年10大ニュース&25年10大予測:大山聡の業界スコープ(83)(1/4 ページ)
今回は、半導体業界の2024年を振り返り、2025年を予測してみたい。
早いもので2024年も間もなく終わろうとしている。半導体業界はもともと変化の激しい業界ではあるが、この1年を振り返ってみると、やや特徴の多い年であったように思う。筆者の独断で半導体業界における2024年の10大ニュースを選出し、これを元に2025年の展望を「10大予測」という形でまとめたい。あくまでも筆者の独断なので、他にもいろいろな選び方や順位付けがあるとは思うが、以下に述べてみたい。
NVIDIAの年:2024年10大ニュース
2024年は何といってもNVIDIAが最も注目された年である。NVIDIAがAIブームをけん引し、製造技術を進化させ、新しい時代のリーダー的存在として期待を担い始めた。2024年の10大ニュースは、このような背景を意識しながら選出してみた。
第1位:NVIDIAの独走
今まで半導体売上高ランキングは、Intelが1992年以降トップを守り続け、最近は時々Samsung Electronicsが首位になる、という2強争いだった。だが、2024年はNVIDIAがぶっちぎりの1位だった。時価総額でも3兆米ドルを超えるという飛び抜け方で、1米ドル=150円の円換算にすると450兆円超という金額になる。ちなみに東証に上場する企業の時価総額合計が約1000兆円なので、1社でその半分という規模である。NVIDIAに独禁法の疑いが掛かった9月、同社の株価は1日で約10%下落した。言い換えれば1日で40兆円以上の価値が消し飛んだわけだ。これはトヨタ自動車が消滅したくらいの金額に匹敵する。NVIDIAの詳細については筆者が発行している「大山レポート」でも特集しているので、ご覧いただければ幸いである。
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第2位:AIブームの到来
NVIDIAがAIブームをけん引した、といって良いだろう。ChatGPTなどを活用する人が増えたのも、NVIDIAの功績なしには語れない。ただしNVIDIAのGPUはデータセンター内におけるAI機能の実現に限定されている。われわれが普段使用している電子機器、つまりPC、スマホ、さらには自動車にも徐々にAI機能が搭載されつつある。2024年はこのようなAIブームが到来した年だといえるだろう。AIは本来ソフトウェアで実現される機能だが、その環境を整えたのが昨今の半導体技術、ということになる。
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第3位:TSMCのシェア拡大
AIプロセッサの実現には最先端プロセスが必要であり、TSMCはその分野の1強である。本連載の前回記事でも述べたが、Samsung、Intelが最先端プロセスの実現で苦戦しており、その間にTSMCはファウンドリー業界でのシェアを拡大している。それ以外のファウンドリーは最先端プロセスを追求していないため、当面はTSMCの独り勝ち状態が続くだろう。2024年は、TSMCの地位が強化された年であった。
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第4位:HBMでSK Hynixが躍進、DRAMトップシェアへ
ファブレスのNVIDIAをファウンドリーとしてサポートしたのがTSMCなら、GPUに不可欠なHBM(High Bandwidth Memory/広帯域メモリ)を供給したのがSK hynixである。HBMはGPUメーカーによる厳しい認定が必要で、技術的なハードルが高い。だが単価は通常のDRAMの約5倍に及ぶ。この分野で先行したSK hynixは初めてSamsungを抜いてDRAM市場のトップシェアに躍り出た。2024年はAIブームで半導体市場が伸びたといわれているが、実際のAIブームの波に乗れたのはNVIDIA、TSMC、SK hynixの3社だけ、といって差し支えないだろう。
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第5位:Intelのファウンドリー事業分社発表
AIブームに乗って躍進する企業があった半面、このブームに乗れずに過去最大の赤字を計上したのがIntelである。長年にわたって半導体業界の王者に君臨していたIntelは、ついにIDM(垂直統合型デバイスメーカー)へのこだわりを捨て、ファウンドリー事業の分社を決断した。外部からの資本注入も視野に入れているという。歴史的にはSK hynixの躍進よりもこちらのインパクトが大きいかもしれないが、現時点では発表だけで具体的なアクションはまだない。今後、Intelというかつての王者がどのように生まれ変わるのか、注目したい。
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