AI処理性能が従来の600倍に 独自NPU搭載のSTM32マイコン:複数人のモニタリングが実現(1/2 ページ)
STマイクロエレクトロニクスは、組み込みAI(人工知能)に向けたマイコンの新製品「STM32N6」を発表した。独自設計のNPU「Neural-ART アクセラレーター」を搭載し、既存のハイエンドマイコン「STM32H7」と比べてAI処理性能は600倍に向上した。CPUコアは最大動作周波数800MHzのArm Cortex-M55を搭載し、STM32マイコンとして史上最高の性能を実現しているという。
STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は2024年12月11日、組み込みAI(人工知能)に向けたマイコンの新製品「STM32N6」を発表した。独自設計のNPU「Neural-ART アクセラレーター」を搭載し、既存のハイエンドマイコン「STM32H7」と比べてAI処理性能は600倍に向上した。CPUコアは最大動作周波数800MHzのArm Cortex-M55を搭載し、STM32マイコンとして史上最高の性能を実現しているという。
2023年10月から特定顧客向けにサンプル提供を行い、現在量産中だ。
現在、AI処理は主にクラウド上で行われている。専用チップを用いて高度な処理ができる一方、データセンターの消費電力やコストの増大が課題となっている。このことからSTは、クラウドとデータをやりとりせず、組み込み機器上でAI推論を行う「組み込みAI(エッジAI)」に注力していて、マイコンなどのハードウェアから各種ソフトウェアまでのエコシステムを構築している。
消費電力/コスト抑制の他にも、組み込みAI処理にはリアルタイム処理の実現、データ通信量の削減、ネットワーク上にデータを送信しないことによるセキュリティ強化などのメリットがある。
AI処理性能は既存ハイエンドマイコンの600倍
新製品のSTM32N6は、独自設計のNPU「Neural-ART アクセラレーター」を内蔵している。AI処理性能は最大600GOPSで、STの既存のハイエンドマイコンの600倍に向上した。消費電力効率は3TOPS/Wだ。メモリはSTM32マイコンで最大容量である4.2MバイトのRAMを搭載した。
カメラインタフェースは、従来のパラレルインタフェースに加えてシリアルインタフェースも搭載。画像信号を直接処理するISP(Image Signal Processor)も搭載した。2.5DグラフィックアクセラレーターやH.264エンコーダー、JPEGエンコーダー/デコーダーも備え、高度なグラフィックス処理を行える。STは同製品の性能について「従来プロセッサ上で実行していたようなAI処理がマイコン上で行える、マイコンとプロセッサの性能ギャップを埋めるような製品だ」としている。
高性能マイコンにはAI処理を必要としない用途もあることから、同製品はNPU搭載でAI処理に特化したライン(AIライン)だけでなく、NPU非搭載で単に高性能な汎用マイコンとして利用できる汎用ラインも展開する。互換性があるため、まずはAI処理を行わない前提で設計し、その後アップグレードとしてAIを導入することもできる。
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