エッジAIにも使える無線マイコン ノルディック「nRF54」:Matterを含めソフトも成熟
ノルディック・セミコンダクターは、2024年12月に開催された「第7回スマートハウス EXPO」で、最新世代のマルチプロトコルSoC(System on Chip)「nRF54」シリーズや、既存のSoCを使ったMatterのデモなどを展示した。nRF54のハイエンド品は、エッジAI(人工知能)にも使うことができる。
ノルディック・セミコンダクター(以下、ノルディック)は「第7回スマートハウス EXPO」(2024年12月11〜13日、東京ビッグサイト)に出展し、同社の最新世代のマルチプロトコルSoC(System on Chip)「nRF54」シリーズや、nRF54の前世代品となる「nRF53」を使ったMatterのデモ、最新のセルラーIoT用SiP(System in Package)である「nRF9151」などを展示した。
nRF54シリーズは、2023年にリリースされた「nRF54H20」と「nRF54L15」を展示した。両製品とも、Bluetooth Low Energy(BLE)の他、MatterやThreadなど複数の規格に対応する。nRF54H20は、nRF54シリーズの中でもハイエンドに位置付けられる製品で、Arm「Cortex-M33」コアを2個の他、RISC-Vのコプロセッサも2個搭載している。メモリ容量は2Mバイトで、ノルディック・セミコンダクターのカントリーマネージャーを務めるJohn Kenney氏は「低消費電力のワイヤレスSoCで、これだけのメモリ容量を搭載している製品はあまり無い」と述べる。RISC-Vコプロセッサは、AI(人工知能)のアルゴリズムを実装するなどの使い方ができる。そのため、「nRF54H20を搭載した機器は、エッジAI端末としても使える」(同氏)という。「nRF54H20は、ワイヤレスSoCではあるが、メインマイコンとしても十分に使用できる性能を持っている」(Kenney氏)
nRF54L15は、Cortex-M33を1個と、RISC-Vコプロセッサ1個を搭載。こちらも1.5Mバイトと十分なメモリ容量がある。「nRF54L15は、Bluetoothを置き換えるような無線アプリケーションを狙う」(Kenney氏)
Kenney氏は、Nordicのソフトウェアも成熟してきたと述べる。Matterについても「Nordicは、Matterの規格を策定しているCSA(Connectivity Standards Alliance)と当初から協業してきた。そのため、Matterのソフトウェアは非常に“出来がよい”と自負している」と語った。
ブースでは、nRF53を使ったMatterのデモを披露した。スマートスピーカーをハブとし、玄関のドアのスマートロックを施錠/解除する様子などを示した。
Kenney氏は、「米国などに比べると、日本の住宅はMatterの導入が遅れている」とするものの、「伸びしろがあると捉えている」と強調する。「米国でMatterの導入が進んでいるのは、スマートホーム化しなければ住宅の販売価格が数パーセント下がるという、米国の事情もある。日本は確かに後れを取っているものの、Nordicとしてはビジネスチャンスだとみている。さらに、Thread対応の『iPhone』ユーザーが増え、スマートスピーカーをハブにしなくても、iPhoneで直接Matter対応機器を操作できるようになれば、日本でも一気にMatter対応品や、Matterの導入が進むのではないか」(同氏)
ソフトの変更だけで非地上ネットワークに対応可能
セルラーIoT向けSiP(System in Package)の第2世代品である「nRF9151」も展示した。LTE-M/NB-IoT、DECT NR+をサポートすることに加え、今後のファームウェアリリースでは非地上ネットワーク(NTN)に対応できるようになる。「ハードを変更しなくても、ソフトウェアのアップデートのみで、GEO(静止軌道)衛星、LEO(低軌道)衛星、HAPS(高高度疑似衛星)に接続できるようになる」(Kenney氏)
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