「世界初」車載用1セルバッテリー保護IC 125℃に対応:リチウムイオンバッテリーへの移行を後押し
エイブリックは、「世界初」(同社)の車載用1セルバッテリー保護IC「S-19161A/Bシリーズ」を発売した。車載用電装部品のバックアップ電源に向けたものだ。
エイブリックは2025年1月15日、「世界初」(同社)の車載用1セルバッテリー保護IC「S-19161A/Bシリーズ」を発売した。車載用電装部品のバックアップ電源に向けたものだ。動作温度範囲は−40〜+125℃。車載信頼性規格「AEC-Q100(Grade1)」に対応している。
車載電装部品のうち、車両緊急通報システム(e-Call)やTCU(Telematics Control Unit)など、安全性に直接関わるものは、電源供給停止に備えたバックアップ電源を備えている。
こうしたバックアップ電源も小型軽量化のニーズが高まっていて、従来のニッケル水素電池からリチウムイオンバッテリーへの置き換えが検討されている。リチウムイオンバッテリーはニッケル水素電池よりも出力電圧が高く、搭載セルを減らして小型軽量化できるためだ。
バックアップ電源のLIBへの移行を加速
S-19161A/Bシリーズは、リチウムイオンバッテリー向けの保護ICだ。車載用1セルバッテリー保護ICは「世界で初めて」(エイブリック)だという。同社の担当者は「e-CallやTCUに対応したリチウムイオンバッテリーは徐々に市場に出始めた段階で、専用の保護ICはこれまでになかった。そのため、リチウムイオンバッテリーのユーザーは過充電や過放電を監視するICを複数組み合わせるか、独自に回路を設計して利用していた」と説明する。S-19161A/Bシリーズを用いれば、1チップでバッテリーの保護が実現する。担当者は「S-19161A/Bシリーズによってニッケル水素電池からリチウムイオンバッテリーへの置き換えを後押ししたい」と話す。
同製品は、2段階の放電過電流と負荷短絡という3段階の放電過電流保護を備えている。また、過充電検出電圧精度は±15mVと高精度で、安全性を確保しながらバッテリー性能を引き出せるという。
動作温度範囲が−40〜+125℃と広いことも特徴だ。+125℃に対応するリチウムイオンバッテリーが限られるため、ここまでの高温環境を想定する用途は多くないが、車載品質の標準に合わせ、余裕を持たせている。エイブリックでは民生機器向けに+85℃まで対応するバッテリー保護ICを手掛けているため、それらのノウハウを活用しながらリーク電流などへの対応を進め、+125℃対応が実現したという。
e-Callやスマートキー、医療機器にも
同製品はe-CallやTCUに加え、スマートキーなどにも利用できる。車載用途以外では、高温殺菌を行う必要がある医療機器などでの利用も想定する。
過充電検出電圧は3.50〜4.80V、過放電検出電圧は2.00〜3.00V。動作時消費電流は最大で4.0μA、パワーダウン時消費電流は最大で50nA。定格電圧は28V。パッケージは2.9×2.8×1.35mmのSOT-23-6だ。
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