成熟ノードチップ、中国で過剰供給か:利益出ず倒産するメーカーも(3/3 ページ)
中国では現在、レガシーノードの半導体製造プロセスを用いて作られたチップ(成熟ノードチップ)が過剰に供給されているという。TSMCとSamsung Electronicsを除くと、2024年の世界成熟ノードチップの営業利益は前年比で23%減少する見込みだ。中国では、利益を出せずに倒産する半導体メーカーも出ている。
供給過剰で利益はほぼ出ず
TechInsightsによれば、成熟ノードチップの供給過剰により、利益がほとんど出ていないことが証明されている。Hutcheson氏によると、中国ではHangzhou Silan MultiChipが300mmウエハー工場の稼働を延期している他、Beijing Century Goldray Semiconductorが破産申請したという。
Hutcheson氏によると、中国は、国内で製造した成熟ノードチップおよび必須チップを搭載する安価なEVを世界の自動車市場に大量に投入することで、米国の規制や潜在的な関税を回避する可能性があるという。
「トランプ新政権が発足すると、米国政府は、この問題の調査から関税による対応へと役割を移行させると思われる。最終的には、中国側からのさらなる報復が予想される。これまでのところ、中国は比較的穏やかで、長期戦を展開している」(Hutcheson氏)
Triolo氏は「多くの米国企業が輸入する製品に使われている中国製の半導体に部品関税を課すのは非常に難しいだろう」と述べる。
さらに「そうした関税が、米国や同盟国の企業が成熟ノードの生産能力を増やすインセンティブとして影響を及ぼすかどうかは明らかではない」と付け加えた。
中国の生産能力拡大は「国内需要を満たすため」
EE Timesが2025年初めにインタビューしたアナリストらによると、技術戦争は激化する可能性が高いという。
Triolo氏によると、成熟ノードの過剰生産能力の問題によって、欧米は政策面で混乱に陥っているという。同氏は、シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS:Center for Strategic International Studies)が発表した記事で「政府当局は、太陽光パネルやEVと同じように、成熟ノード事業も中国に乗っ取られるのではないかと懸念している」と述べている。「成熟ノードチップは、EVや太陽光発電とは異なりコモディティであるため、過剰生産能力というレンズを通してこの問題を見るのは間違っている」と同氏は指摘する。
Triolo氏によると、SMICやHua Hongのような中国企業が生産能力を拡大する目的は、主に国内需要を満たすことだという。
Triolo氏はCSISの記事で「中国は依然として国内の半導体需要の大半を輸入に頼っているため、国内生産能力を拡大する商業的誘因がある」と述べている。「米国の輸出規制も、この傾向を加速させている」と同氏は付け加える。これには2つの要因があり、一つは、SMICのような企業が先端ノード生産に集中するのを妨げられること。もう一つは、中国政府が中国企業に対し、さまざまな政府機関や産業部門のハードウェア/ソフトウェアについて、海外サプライヤーに代わる国内サプライヤーを探すよう奨励していることだという。
SemiAnalysisによると、米国と中国の技術戦争によって、中国で販売するチップメーカーは、成熟ノードチップの国内調達を増やすことを迫られるだろうという。
Kundojjala氏は「中国の新しい成熟ノードの生産能力の一部は、外国企業が“中国のための中国”戦略を採用する際に利用される可能性が高い」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 2029年に「シンギュラリティ」が到来か 〜半導体は「新ムーアの法則」の時代へ
“まだまだ先”だと思っていた「シンギュラリティ」の到来は、ぐっと早まり、なんとあと5年以内にやってくるという。そこで本稿では、シンギュラリティが到来しているであろう2030年の半導体世界市場を予測してみたい。その頃には、チップ当たりではなく、パッケージ当たりの演算能力を指標にするような「新ムーアの法則」が、半導体の進化をけん引しているのではないだろうか。 - 米国の厳しい対中規制 目的見失えば逆効果に
米国は2024年12月に、新たな対中輸出規制を発表した。この一撃は両国間の技術戦争においてこれまでで最も強力なものだが、アナリストによれば、その効果には疑問があり、米国のイニシアチブは不十分かもしれないという。 - 米中ハイテク冷戦 似て非なる両者の戦略
第2次トランプ政権の発足を間近に控えた米国。ドナルド・トランプ氏の大統領就任により、米中間のハイテク戦争は激化すると予想される。本稿では、両国の規制やハイテク企業向け戦略を振り返ってみたい。 - 暫定CEOが示唆した「Intelの今後」
2024年12月1日(米国時間)に突如として前CEO(最高経営責任者)のPat Gelsinger氏が退任したIntel。暫定共同CEOを務めるMJ Holthaus氏は同年12月11日に開催されたカンファレンスで、今後のIntelの事業計画についていくつかの手掛かりを示した。 - 中国で高まるシリコンフォトニクスへの期待
複数の大手ファウンドリーと、中国の一部の企業が、シリコンフォトニクスの需要の波に備えているという。シリコンフォトニクスは、最先端の半導体製造プロセスを使わずとも製造できる。そのため、中国では「米国による半導体関連の規制を回避できる技術」として期待する向きもあるという。 - 2025年、Alteraを手に入れるのは誰だ
最近、IntelがAltera売却を実行に移すことを決意しているようだが、価格の高さが唯一の問題になっているという。2025年、Alteraを手にするのはどの企業だろうか。