リチウムイオン電池の容量が3倍に 新規負極を開発:全固体リチウムイオン電池にも応用
名城大学は、ゲルマニウム(Ge)と固体電解質「LiAlGePO」を組み合わせた「複合負極」を開発した。この複合負極を用いたリチウムイオン電池は、1000mAh/g以上と従来の約3倍となる高容量を、300サイクル以上も劣化なく駆動させることに成功した。
LiAlGePOがGeの亀裂を抑制し、負極の劣化も防ぐ
名城大学は2025年2月、プラズマプロセスを用いゲルマニウム(Ge)と固体電解質「LiAlGePO」を組み合わせた「複合負極」を開発したと発表した。この複合負極を用いたリチウムイオン電池は、1000mAh/g以上と従来の約3倍となる高容量を、300サイクル以上も劣化なく駆動させることに成功した。複合負極は全固体リチウムイオン電池にも応用が可能とみている。
小型で軽量のリチウムイオン電池を実現するには、高容量の負極を開発する必要があるという。Geは理論容量が1600mAh/gでカーボン(C)の4.3倍であることから、負極材料として有望視されてきた。ただ、充放電を繰り返すと体積の膨張によって亀裂などが生じ、容量が急激に低下するなど課題もあった。
そこで今回、GeとLiAlGePOを組み合わせた複合負極を、バインダー(有機接着剤)を用いないプラズマプロセスで作製した。考案したのは「Ge層をLiAlGePO層でカバーした構造」と、「GeとLiAlGePOを混合した構造」の2種類である。
これら複合負極の容量を測定したところ、Ge層をLiAlGePO層でカバーした構造では799mAh/g、GeとLiAlGePOを混合した構造では1074mAh/gとなり、300サイクル以上も劣化なく駆動させることができたという。しかも、負極に用いたLiAlGePOがGeの亀裂を機械的に抑制して電解液と良好な界面を形成。負荷の劣化を化学的に抑制できることも分かった。
今回の研究成果は、名城大学総合研究所次世代バッテリーマテリアル研究センターの内田儀一郎教授(プラズマ理工学)、池邉由美子准教授(無機材料化学)、理工学研究科電気電子工学専攻の藤掛大貴大学院生、大前知輝大学院生らによるものである。
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