Infineonの米工場をSkyWaterが買収へ:米国防省の「信頼サプライヤー」
米国の専業ファウンドリー企業SkyWater Technology(以下、SkyWater)が、Infineon Technologiesが米国テキサス州オースティンに有する200mmウエハー対応工場「Fab 25」を買収する。SkyWaterは産業、自動車、防衛用途に不可欠なチップの米国での生産を強化する方針だ。
SkyWater Technology(以下、SkyWater)は、Infineon Technologies(以下、Infineon)が米国テキサス州オースティンに有する200mmウエハー対応工場「Fab 25」を買収する。2025年2月26日(米国時間)、両社が契約締結を発表した。SkyWaterは今回の取引によって産業、自動車、防衛用途に不可欠なチップの米国での生産を強化する。取引は米国における規制当局の承認を経て、数カ月以内に完了する見込みだ。
両社は同時に長期供給契約も結んでいて「Infineonは米国における強力かつ効率的で拡張可能な製造拠点を維持できる」としている。
CypressがルーツのSkyWaterが旧Cypress工場を購入
SkyWaterは2017年に設立された米国の専業ファウンドリー企業だ。プライベートエクイティファンドのOxbow Industriesが、旧Cypress Semiconductor(Infineonが2020年に買収)の子会社だったCypress Foundry Solutionsを買収し、元AMD幹部のThomas Sonderman氏をCEOに任命して設立した。
なお、今回買収するFab 25も、もともとはInfineonが買収した旧Cypress Semiconductorの工場だ。
SkyWaterは米国国防総省から、信頼できるサプライヤーとして、国防マイクロエレクトロニクス活動(DMEA)のカテゴリー1A認定を受けていて、防衛および航空宇宙をはじめ、自動車、バイオ医療、産業、量子コンピューティングなど向けに事業を展開している。また、2024年12月には米商務省が、同社の既存施設の近代化および設備のアップグレードなどのため、CHIPS法に基づき、最大1600万米ドルを助成する予防的覚書に署名したことも発表している。
Infineonは米国において約4000人を雇用。研究開発に特化した15の拠点および、研究開発職約1000人を有している。Fab 25では現在、自動車、産業、通信の大手企業向けに年間10億個のチップを製造しているという。なお、今回の契約では現在の従業員全員がSkyWaterの従業員となるといい、製造雇用約1000人が維持される。
『基盤的半導体』のサプライチェーン強靭性を強化
SkyWaterは買収後、Fab 25をファウンドリーとして運営し、米国内で利用可能な生産能力を拡大する。具体的には産業、自動車、防衛アプリケーションに不可欠な130nmから65nmノードのチップを製造する。SkyWaterは、Fab 25の買収によって「当社のファウンドリーとしての規模を大幅に拡大し、65nmプロセスのインフラ、銅処理規模の拡大、高電圧バイポーラCMOS-DMOS(BCD)技術などの追加能力をもたらす」などと説明している。
SkyWaterのSonderman氏は「機密性の高い戦略的アプリケーションに不可欠な『基盤的半導体(foundational chips)』のサプライチェーン強靭性を強化し、国家安全保障と経済安全保障を強化できると期待している。この投資は、防衛と産業の両分野の顧客への対応能力を強化するものだ。オースティンの優秀なチームの実績ある専門知識を活用することで、当社はこの工場を米国半導体ファウンドリーネットワークの要として位置付けている」と述べている。
Infineonのエグゼクティブバイスプレジデント兼フロントエンド事業責任者Alexander Gorski氏は「今回の取引は、当社の製造戦略に完全に合致している。自社製造が競争優位性をもたらさない場合に、戦略的ファウンドリーパートナーとのシナジーを創出するものだ」などとコメントしている。
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