「2030年までに50社」 サウジアラビアが半導体企業誘致に意欲:米国企業が注目(3/3 ページ)
サウジアラビアは、2030年までに50社の半導体メーカーを誘致することを目標として、人材確保の支援や運用資金の提供を行っている。
チップレットエコシステム構築を目指す
インセンティブや人材、資金に加え、エコシステム構築のもう1つの要素となるのが、顧客企業だ。Sherwani氏は、NSHのグループが提供するチップの主要顧客は5〜6社となる見込みだとした。
NSHのグループには、サウジアラビアをエレクトロニクスと先端材料の世界的な拠点にするために2023年に1000億米ドルの公的投資で設立されたAlatに加えて、Neom Future City projectや、1000億米ドル規模のTranscendence AI infrastructure projectを含む約30社のデータセンターもある。
Alatは、30以上の製品カテゴリーの製造を目指しているという。これには、半導体、ロボットや通信システム、高度なコンピュータ、デジタルエンターテインメント製品、ヘルスケア、建築、鉱山向け重機などが含まれる。AlatとLenovoはLEAPで、サウジアラビア製のノートPC、デスクトップ、サーバを数百万台製造する20万平方メートルの敷地の工場建設に着手すると発表した。生産開始は2026年を予定している。
LEAPでの別の講演では、元IntelおよびAMDのベテランで、2025年1月にシリコンバレーを離れてAlatの半導体事業戦略担当バイスプレジデントに就任したAli Ibrahim氏が、同社のチップ製造を確立するためのアプローチについて語った。
「半導体事業部門は、IDMファウンドリー、ファウンドリー、チップパッケージングというハイブリッドなアプローチを採用している。IDMファウンドリー側では、電力、センシング、エッジAIに重点を置き、ファブでは現在28nmと40nmに重点を置いている」(Ibrahim氏)
その後Ibrahim氏は、高性能コンピューティング(HPC)とデータセンター向けのチップ設計におけるいくつかの課題と、その解決策となるチップレットについて話を続けた。同氏は「エコシステムを『シリコン中心』の考え方からパッケージも含めた『システムレベル』の計画に変更する必要がある」と述べた。これには、IP(Intellectual Property)、EDA、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)といったエコシステム内の複数のベンダー間のコラボレーションが必要だ。
Ibrahim氏は「現在のチップレットソリューションの多くは単一ベンダー中心だが、さまざまなレベルで標準化の取り組みを伴うオープンなチップレットエコシステムが必要だ」と強調した。彼は、UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)、Arm、OCP(Open Compute Project)による取り組みのいくつかを紹介した。
「AlatとNSHの目標は、サウジアラビアに活気のあるチップレットエコシステムを構築することだ」とIbrahim氏は結論付けた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
日本の半導体誘致戦略のあるべき姿
TSMCの工場誘致が順調に進んでいる。今後、日本はどのような半導体メーカーの誘致を積極展開すべきなのか。誘致する側、誘致される側、双方の立場を考えて私見を述べてみたい。バイデン政権の置き土産 「CHIPS法」の効果を検証する
米シンクタンクが、CHIPS法(CHIPS and Science Act)の効果を評価する報告書を発表した。これまでに助成が確定あるいは覚書を締結したプロジェクトが不可欠だったかどうかを、率直に評価している。カナダが半導体投資を強化 「大規模工場誘致」以外の活路とは
カナダでは、連邦政府がAI(人工知能)や半導体産業への投資を表明しているほか、研究支援機関が5年間にわたる半導体産業支援のイニシアチブを立ち上げるなど、半導体産業への支援が活発化している。米国ほどの資金力がない中でカナダが行っている半導体支援策を紹介する。マレーシアに「半導体の時代」が到来か
マレーシアは1960年代後半からアセンブリ/テストといった半導体後工程を担い、より高付加価値な前工程の設計業務への移行を長年模索してきた。とうとう今その時が来ていると言えそうだ。欧米や中国の半導体企業の製造拠点が続けてマレーシアに進出している。中国依存で揺れる欧米EV市場 トランプ政権発足でさらに複雑化か
欧州の電気自動車(EV)業界は、中国メーカーとの競争や材料の中国依存という問題に直面している。米国ではドナルド・トランプ政権の発足による政治システムの変革や中国への関税引き上げなどによって、さらに状況が複雑化しそうだ。「他国に頼っている場合ではない」 RISC-Vで技術的独立を目指す欧州
欧州は、RISC-Vを活用した技術開発を加速させている。半導体業界におけるアジアへの依存度を下げて欧州の技術的独立を推進するねらいだ。