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新たな訴訟も提起 ArmとQualcommの終わらない法廷闘争ArmがALA規定に違反したとの証拠も(2/2 ページ)

2024年12月に行われたArmとQualcommのライセンスについての裁判では、Qualcommが勝訴している。この裁判以降、この訴訟に関する大きな進展が数多くみられた。さらに、QualcommはArmに対し、別途新たな関連訴訟を提起している。

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Arm CEOは「チップ開発でライセンシーと競合しない」と証言

 Qualcommの弁護士は法廷証言の中で、ArmのCEOであるRene Haas氏に対し、Armが独自チップを開発していることや、QualcommがArmの競合相手なのかどうかという点について、非常に多くの質問をした。Haas氏は「Armはチップの開発について検討したことがあったが、ArmとQualcommは同じ顧客に販売するために同じ製品を開発しているわけではないため、競合関係にはない」と答えている。しかし驚いたことに、この証言から2カ月もたたないうちに、英国Financial Timesが「Armはデータセンター向けチップの自社開発に取り組んでいて、ソーシャルメディアの巨人Metaが最初の顧客になる可能性がある」と報じたのだ。さらに興味深いことに、Reutersが報じたところによると、Armはこの証言の数週間前から、同社のライセンシーの中から半導体設計の人材を積極的に探していたという。

 これは、Armの巨大なエコシステムにとってはダブルパンチとなった。まず、業界リーダーたちの中でも特にArmのライセンシー各社が、Armが自社製チップを開発しようとしているということに驚いた。そしてもう1つ、ArmのCEOが自ら「ArmはQualcomm(ライセンシー)とは競合しない」と断言した直後に、半導体開発のニュースが入ってきたという点だ。Haas氏は、半導体業界の裏も表も、半導体設計にどれだけ期間を要するのかも知りつくしている。あの証言をした時点で半導体計画のことを知っていたのは明らかだ。Noreika裁判官もそれを覚えていて、判決を下す際に考慮するのではないだろうか。

Qualcommは新たな訴訟を提起

 Qualcommは裁判の後、2025年1月3日に「Armは、ALAに必要とされる成果物を開示していない」として、同社を相手取り新たな訴訟を提起した。これは、Nuvia技術をベースとしたQualcommのカスタムコア設計に特化したものだ。Qualcommは「これらの成果物は、Armだけが把握して管理できるものであるため、何がどれくらいの期間開示されていなかったのかは知る由もない」と述べている。

 Qualcommはさらに「ArmはQualcommの顧客に対して先の訴訟に関する事実を偽って伝え、Qualcommが製品を提供する能力について顧客が疑いを抱くよう仕向けた。またArmは、2024年にQualcommが開催した大きな注目が集まる年次カンファレンス『Snapdragon Summit 2024』に合わせてALAをキャンセルする通知書を送り、それをリークしたことでビジネス上の損害を与えた」と主張している。このキャンセル通知は、現在は取り下げられている。

まだまだ終わらない法廷闘争

 両社の法廷闘争は今も続いている。和解は常に可能だが、この問題にはあまりにも多くの側面と考慮すべき事項があり、非常に厄介なものとなっている。Qualcommにとって考慮事項にはポートフォリオ全体をカスタムコアに移行することが含まれるが、これには時間がかかるうえ、それが合理的かどうかも分からない。現在のArm ALAが期限切れとなる2033年以降、Qualcommの戦略はどうなるのだろうか。

 Arm側は収益と価値を高めるために多くのALAを解消し、独自チップを設計し、ライセンシーのエコシステムと競合して混乱を引き起こし、RISC-Vの台頭に備えるなど、さまざまなことを行っている。

 不明な点も多い。ArmがMeta向けに開発するとうわさされるデータセンター向けチップについても、Nuviaが同様のチップを開発し、Armと協力していたことを考えると、法的措置が取られる可能性がある。この騒動にはまだまだ続きがありそうだ。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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