米国製造業は拡大が続くも減速傾向に 関税政策で逆風か:電子製品業界は苦戦(2/2 ページ)
2025年2月の米国製造業は、購買担当者景気指数(PMI:Purchasing Manager's Index)がわずかに低下したものの、2カ月連続で拡大を遂げた。しかし、関税を巡る不透明感や需要の減少などに企業が対応する中で、新たな逆風が吹いている。
関税負担の議論による納品遅れも発生
入荷遅延指数はさらに増加し、サプライヤーが需要への対応にますます苦戦していることを示唆している。Fiore氏は「その要因としては、一部で前倒し納品が行われていることや、誰が関税を負担するのかについての議論などが挙げられる」と述べる。レポートによると、非金属鉱産物製品や繊維を含む9つの業界において、サプライヤーの納品が遅れているという。
在庫指数は縮小傾向ではあるが、前月比での増加はある程度の回復を示唆している。これは、関税や港湾停止の可能性を予測して早期納品が要請されたためとみられる。
顧客の在庫指数は45.3%に達し、「Too Low(低過ぎる)」の領域に入った。Fiore氏は「これは、将来の生産に関する見通しが楽観的であることを示している」と述べる。
物価指数が急上昇し、原料価格は5カ月連続で上昇している。この価格上昇は、新たな関税や今後課される関税などによって、商品価格が劇的に上がったために生じたものだ。価格上昇が報告された商品としては、アルミニウムや鉄、プラスチック用樹脂などがある。一方、電気部品は供給不足が続いている。
政策による混乱への対処が求められる米国製造業
製造業は拡大し続けているが、レポートでは、新しい関税が価格と需要に及ぼす影響についてますます懸念が高まっていると強調されている。新規受注指数の低下は、関税の実施を巡る不透明さから顧客が新規発注を停止していることを示す。今後数カ月間、製造業にとって重要なのは、このような政策によって生じる課題を乗り越えながら成長を維持していくことではないだろうか。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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