カシオ、電卓事業立ち上げから60年 PC普及後も「手堅い需要」:今後は付加価値向上へ
2025年、カシオ計算機の電卓事業が60周年を迎えるにあたって、同社は60周年記念の取り組みや電卓事業についての説明会を実施した。
2025年、カシオ計算機(以下、カシオ)の電卓事業が60周年を迎える。同年3月12日、カシオは60周年記念の取り組みや電卓事業についての説明会を実施した。
カシオが初めて発売した電卓は、世界初のメモリ機能搭載電卓「001」(1965年発売)だ。以降、世界初のパーソナル電卓「カシオミニ」(1972年発売)や世界初のグラフ関数電卓「fx-7000G」(1985年発売)などを展開してきた。2015年にはカシオ最高峰のプレミアム電卓として、切削アルミニウムボディーやキーのタッチ感にこだわった「S100」を発売。2022年には操作性を追求した電卓として、操作面を3度傾けて入力しやすくした「JE-12D」を発売するなど、特徴的な製品も多い。
現在、カシオの電卓は100カ国以上で販売されていて、累計出荷台数は約18億台にものぼる。2023年度の出荷実績は約4200万台で、国内シェアは約60%だったという。
なお、2023年度の出荷台数は前年比で7%減だった。カシオ 教育関数BU 事業部長の佐藤智昭氏は「PCやスマートフォンの普及で電卓の出荷台数は減少傾向にあるものの、完全に代替されているわけではない。電卓は立ち上げに時間がかからないことやキーにしっかりとした押し心地があることによってまだまだ手堅い需要がある」と説明した。
電卓販売にとどまらず教育支援も
現在カシオが展開する電卓には、四則演算などの機能を中心としてオフィスや家庭で使用される一般電卓と、複雑な関数計算機能を備えた関数電卓がある。
関数電卓は主に米国やフランス、英国などの教育現場で利用されていて、毎年世界で約2200万人の新入生がカシオの電卓を購入している。カシオ関係者は世界共通で「GAKUHAN(学販/学校販売)」という用語を使い、教員向けトレーニングや教材提供など、電卓の販売にとどまらない教育支援に取り組んでいるという。
一般電卓も四則演算を行うスタンダードな電卓だけでなく、米国やタイで税申告に使われるプリンタ一体型電卓や、検算機能や読み上げ機能を追加した高付加価値電卓などがある。
今後の事業戦略としては、関数電卓ではユーザーインタフェース(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)を改善してより一層使いやすさを高め、一般電卓はデザイン性などによって情緒的価値を高めることを目指す。
60周年記念で40の電卓を展示
電卓事業60周年を記念する取り組みとして、カシオは特別サイトをオープン。カシオの電卓事業の歩みやこれまでの特徴的な製品を紹介している。さらに、2025年3月25日〜6月27日まで、樫尾俊雄発明記念館(東京都世田谷区)で約40モデルの電卓を展示する。同記念館は、事前の来館予約のうえ見学可能だ。同年9月ごろには代表的な電卓のミニチュアをカプセルトイとして販売予定だという。
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