Apple純正モデムが始動 「C1」のルーツを探る:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(91)(1/3 ページ)
今回は、Apple「iPhone 16e」と、iPhone 16eに搭載されているApple開発のモデム「C1」について解説する。
現在多くの電子機器にとって最も重要なコンポーネントが無線通信チップ(およびチップセット)だ。SNSもWeb閲覧も通信チップがないと何もできない。車載機器でも本体にデータを持たず通信で地図や音楽を扱うものが増えている。とりわけスマートフォンは多くの無線通信によって構成されている。Wi-Fi、Bluetooth、NFC(Near Field Communication)は生活上も必須のアイテムになって久しいし、広域データ通信として4G、5Gは社会インフラになっている。
そうした必須アイテムの1つである広域データ通信の端末側モデムは多くの会社がチップを提供しているわけではなく、一般販売されるものは数社に限られている。米Qualcomm、台湾MediaTek、中国UNISOCだ。HuaweiやSamsung Electronicsも5Gモデムを有しているが、一般販売は行わず自社製品に活用する。Samsung Electronicsの場合は、同社チップを活用する「Google Pixel」シリーズにも提供している。Appleは、Infineon Technologies(以下、Infineon)→ Intel → Qualcomm → Intel → Qualcommとモデムチップセット提供メーカーを切り替えながら、「iPhone」やモデム内蔵「iPad」を提供し続けてきた。
「iPhone」に採用されたモデムの変遷
5GモデムをAppleとして初搭載した2020年モデルの「iPhone 12」以降はQualcommチップセットを採用している。2024年9月発売の「iPhone 16/16 Pro」はQualcommの「Snapdragon X71」モデムが採用されている。2025年2月にAppleから発売された「iPhone 16e」では、QualcommモデムではなくApple独自開発の5Gモデム「Apple C1」が搭載されている。今回はiPhone 16eおよびC1について報告する。
図1は2025年2月に発売されたiPhone 16eの様子である。内部はバータイプの電池と2層の基板(上部は通信、下部はプロセッサの2階建て)、TAPTIC、2基のスピーカー、シングルカメラで構成されている。シングルカメラはソニー製だ(詳細は有償のテカナリエレポートに掲載)
図2は2024年9月発売のiPhone 16/16 Proおよび2025年2月発売のiPhone 16eの内部の様子、カメラユニット、メインの48Mピクセルカメラのセンサーの様子である。iPhone 16 ProのみL字型電池、他2機種はバー型電池となっている。カメラがシングルの分、面積が大きく確保できるので、iPhone 16eの電池容量は大きいものになっている。48Mピクセルのカメラの画素数は同じ(素子構造も同じ)だが、ピクセルサイズの異なるセンサーがそれぞれ採用され、面積はiPhone 16eと16 Proでは3倍以上の差がある。3機種とも完全共通の部品がほとんどないという点でAppleの高い開発力が明確になっているといえるだろう(顔認証などは共通)
図3はiPhone 16eの通信側基板の様子である。Appleマークが刻印されたチップが3つ存在する。Apple以外にも通信用パワーアンプなどがビッシリ並んでいる。Appleマークの3チップの総称がC1。それぞれのパッケージにはAppleチップの独自名称、APLXXXXが刻まれている。左が5Gモデムデジタルベースバンド(2G/3G/4Gもカバー)、右上が通信用トランシーバー(MIMOなどを搭載)、右下はモデムシステムの電源を制御する電源管理IC(PMIC)となっている。QualcommやMediaTekと同じ構成だ。もう1点、大きな新たな取り組みがApple C1には備わっている。水晶発振子を用いず、MEMS + Generator方式が採用されている(詳細は有償のテカナリエレポートに記載)
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