ダイヤモンド半導体の社会実装急ぐ 佐賀大とJVCケンウッド:ミリ波帯通信用など視野
佐賀大学とJVCケンウッドが、次世代の高周波パワー半導体として期待されるダイヤモンド半導体の社会実装に向けた共同研究を開始する。佐賀大学は、JVCケンウッドから共同研究契約を通じた支援を受け研究を促進するとともに、JVCケンウッドに主にマイクロ波帯、ミリ波帯通信用半導体の技術情報を提供する。
佐賀大学とJVCケンウッドは2025年4月21日、次世代の高周波パワー半導体として期待されるダイヤモンド半導体の社会実装に向けた共同研究を開始すると発表した。佐賀大学は、JVCケンウッドからダイヤモンド半導体研究への共同研究契約を通じた支援を受け研究を促進するとともに、JVCケンウッドに主にマイクロ波帯、ミリ波帯通信用半導体の技術情報を提供する。
ダイヤモンド半導体は、現在幅広く使われているシリコン半導体と比べ約5倍のバンドギャップエネルギーを持つ。このためダイヤモンド半導体が実用化できれば、約5万倍の高出力電力/高効率のパワー半導体にすることができると期待されている。その他にもダイヤモンド半導体は、マイクロ波帯、ミリ波帯無線の高性能通信機器や量子コンピュータの記憶素子としての応用も検討されている。
佐賀大学は、ダイヤモンドで半導体の独自のドーピング技術を保有していて、2022年には、ダイヤモンド半導体デバイスを作製し、875MW/cm2という出力電力と3659Vの出力電圧を達成したと報告。2023年にも10ナノ秒を切る高速スイッチング動作と長時間連続動作が可能なことを確認したと発表するなど、その成果を継続的に発表している。
JVCケンウッドは、10年先の未来を見据えた新たな価値の創造を目指し、2021年に「未来創造研究所」を新設している。今回、同社が強みとする無線通信機器への活用や将来のオールフォトニクスに使われるデバイス研究などを見据え、未来創造研究所が中心となってこの共同研究に参加するとしている。
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