半導体企業が勃興するインド 狙いはアナログ/パワー:AI半導体が勢いを増す中(2/2 ページ)
インドで半導体/エレクトロニクス業界の活性化が加速している。2025年4月には、大手のエンジニアリングソリューション企業であるCyientが、ASICの設計開発を専門に手掛ける子会社Cyient Semiconductorsを設立した。
サプライチェーンリスクも考慮したパートナーシップ構築
「われわれはベルギーにおける戦略的買収により、主にアナログ/ミックスドシグナル分野において、すぐに使用可能な600種を超えるIPブロックポートフォリオを保有しており、既に大きな競争優位性を確保している。当社のIPブロックは、組み込みMCU統合機能と組み合わさることで、“スマートパワーソリューション”を提供できる」(Narayan氏)
また同氏は「これまでのASICのテープアウト数は約40、出荷個数は500万に上る」と述べている。
Cyient SemiconductorsはASIC設計の他にも、半導体エコシステムに不慣れな顧客に対し、マルチベンダーファウンドリーの選定やOSATのオプション、在庫管理、地政学的なサプライチェーンリスクなどの複雑な状況をうまく乗り越えられるよう支援している。
Narayan氏は「われわれは、TSMCをはじめとする素晴らしいファウンドリーパートナーシップを構築し、特にOSATにおいてこれまで築き上げてきた、優れたサプライチェーンを確保している。顧客企業がTSMCを選択しようとマレーシアや中国のOSATベンダーを選択しようと、サプライチェーンリスクについて一通り説明する。単にイノベーションだけでなく、在庫/リスク管理も重要だ」と述べる。
同社は、特に研究開発支援の面で、インド政府の「Design Linked Incentive(DLI)」スキームおよび「Chips-to-Startup(C2S)」プログラムに沿う形をとっている。Narayan氏は、「インドは現在、本格的なIP作成機能と合わせて、有能なエンジニアを育成するという変換点に立っている」と主張する。
また同氏は「インドの人材は、特にアナログ/ミックスドシグナル設計の分野で急成長しているが、われわれにはまだIP開発の文化を構築する必要がある。この部分については、imecやSRC(Semiconductor Research Corporation)のようなプレイヤーから支援を受けてきた」と付け加えた。
Cyient Semiconductorsは、スタートアップから実績ある機器メーカーまで多様な顧客ポートフォリオを確保しているが、長期的な目標は、特に欧米の産業機器メーカーや自動車メーカーから好まれるカスタムシリコンパートナーになることだとしている。親会社の基盤があるため、Narayan氏は、Cyient Semiconductorsはスタートアップ企業と大手標準製品メーカーの両方に対抗できる立場だと主張する。「機器メーカーは10年間シリコンを供給できるパートナーを必要としており、われわれはまさにそれを実現する準備ができている」(Narayan氏)
「現在、最大のASIC市場は依然として米国と欧州だが、インドは今後急速に成長すると確信している。われわれは適切な時期に適切な場所におり、成長の道のりにおける重要な転換点を迎えている」(Narayan氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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