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「CANの置き換え狙う」 クルマをイーサネット化するADIのE2B技術SDVと好相性、ソフト開発でも利点(2/3 ページ)

Analog Devices(ADI)が展開する「E2B」は、車載ネットワークを容易にイーサネット化できる技術だ。ソフトウェア定義自動車(SDV)の実現に向け、ゾーンアーキテクチャへの移行における課題を解決する技術だとADIは意気込む。

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イーサネット化の課題、部品点数の増加にどう対応するのか

 エッジノードまで含めて車載ネットワークを全てイーサネット化する場合、最も大きな課題の一つになるのが、部品点数の増加だ。既存のデバイスでエッジノードをイーサネット化するためには、外付けのイーサネット物理層(PHY)デバイスを用意し、さらにマイコンを接続して、ようやくその先にセンサーをつなげるという形になる。これはコストや実装面積の増加を招く上に、マイコンにイーサネットのソフトウェアスタックを実装しなければならない。「エッジノードに行けば行くほど、イーサネットを導入する障壁が高くなる。これを解消するのが、E2Bトランシーバーだ」(小野氏)

 E2Bトランシーバーは、10BASE-T1S対応のPHYとMACを1パッケージに搭載したチップである。最大のメリットは、マイコンレスでセンサーやアクチュエーターを10BASEのイーサネットに接続できるという点だ。コストおよび実装面積の点で、従来の構成よりも優位性がある。


E2Bソリューションのイメージ[クリックで拡大] 出所:ADI

 さらに、ハードマクロ化されているので、ソフトウェアの介在を全く必要としない。エッジノードを制御するためのソフトはセントラルECUに集約されることになる。ソフトが散在しないので、OTA(Over The Air)にかかる工数やシステム全体の検証/メンテナンスのコストが肥大化せずに済む。「自動車メーカーにとって、ソフトの検証とメンテナンスのコストを劇的に下げられる」(小野氏)


LEDや温度センサー、モーターなどを、SPIやI2C、UARTなど、チップでは一般的なインタフェースでE2Bトランシーバーと接続できる。システム全体では「セントラルコンピュートユニットに搭載されているSoCが、自分の手足のようにエッジのモジュール(LEDやセンサー、モーターなど)を制御しているように」見える[クリックで拡大] 出所:ADI

E2B RCPを活用したゾーンアーキテクチャのイメージ。エッジノードを制御するためのソフトはセントラルECUに集約される[クリックで拡大] 出所:ADI

 ソフトが不要なので、ネットワークを起動したときのブートアップ時間も短くなる。「極端なことを言えば、エッジ側のE2Bトランシーバーが乗っているモジュールに電源が投入されれば、あとは自動的にE2Bトランシーバー(E2B RCP)が起動してセンサーとやりとりし始めるようになる」(小野氏)

 E2Bトランシーバーは、ネットワークを介してコンフィギュレーションを動的に変更できる。そのため、実装後でも、新しい機能を追加するための仕様変更を容易に行える。E2Bトランシーバーの数を増やして、機能を拡張することも可能だ。

 さらに、従来のCANやLINとは異なり、新しいノードを追加したときも、通信スケジューリングをし直す必要はない。10BASE-T1Sには、ネットワークのトラフィックを時分割するPLCA(PHY Level Collision Avoidance)という機能が実装されている。E2Bにも同機能が搭載されていて、通信スケジュール管理を考慮しなくても済むので、ノードを追加しやすい。さらに、TSN(Time Sensitive Network)も組み込まれているので、上位側のECUと完全に時刻を同期することも可能だ。

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